[映画] イン・トゥ・ザ・ワイルド (2.5/5点)

Posted on 2008年9月15日. Filed under: Roundup | タグ: , , |

映画「イン・トゥ・ザ・ワイルド」を観た。以下、感想。

映画『イントゥ・ザ・ワイルド』オフィシャルサイト
http://intothewild.jp/top.html

当然内容に言及しているので、観るつもりの人は気をつけて。

この映画の原作は、登山家でジャーナリストであるジョン・クラカワーが書いた「荒野へ(Into The Wild)」。アメリカではベストセラーになり、放浪の末にアラスカで死んだ若者クリストファー・マッカンドレス(Christopher McCandless)を英雄視する人々も多いとか。
Wikipediaにも項目がある。

なお、Wikipediaの以下のページには、彼の遺体と共に発見されたカメラ内に残っていた最後の記念撮影風の写真がある。そういうのを見たくない人は注意。

Christopher McCandless – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Christopher_McCandless

この映画を観ていてまず面食らったのは、クリスが旅するアメリカの風景、自然の存在感の大きさだ。映画なんだから視覚に訴えてくるのは当たり前だが、本を読んでわかったつもりになっていたクリスの旅について、より身体(からだ)レベルでわかったような気がする。彼は成績がよく、社会問題への関心も持ち、内省的な若者だったが、高校時代はクロスカントリー部のキャプテンを務めるなど身体能力も高かった。その彼が挑んだ場所はこういうところだったんだ、ということがよく実感できた。

クラカワーの「荒野へ」にもその記述はあるが、映画の方が大きく踏み込んでいる点として彼の両親の不和が挙げられる。で、皮相な見方をすればクリスの死は「両親に怒りを抱いた若者が家を飛び出し、無軌道な旅の末に招いた悲劇だ」といった感想も抱けてしまう。
でもそういう類型化をする前に、少しでもクリスについて調べてみるといいと思う。

映画では、アラスカでクリスがジャック・ロンドン、トルストイ、ソローを読みふけったこと、とくにソローの「ウォールデン(森の生活)」を読んでいたことや、パステルナークの「ドクトル・ ジバゴ」を読みどこにアンダーラインを引きどんな感想を書いていたかといった点にはほとんど触れない。内面の描写が足りないのだ。

ラストシーン。クリスの最期の描き方はかなり強烈だ。息絶える瞬間までをリアルに、というより映画ならではの表現を総動員して恐怖を煽り立てる。えげつないと言ってもいい。このシーンに感情移入してしまうと、以後しばらく気分が落ち込むほどだ。

クリスの死因について映画では、彼が食用のアメリカホドイモと似た有毒植物を食べたために下痢をして衰弱し、悪態をつくシーンがある。が、これは彼の死後出てきた推測であって、まして彼がそのことに気づいていた証拠はない。つまりフィクション。

こういう演出が必要だったのか? と思う。「お父さんお母さんの言うことを聞かない悪い子はこうなります」という教訓映画のようじゃないか。

この映画は、5点満点中2.5点。

ついでに。

クラカワーが「荒野へ」の元となる記事を”Outside”誌に書いたのは1993年1月。検索してみたらウェブサイトに掲載されていた。

Into The Wild – The Story of Chris McCandless by Jon Krakauer | Outside Online
http://outside.away.com/outside/features/1993/1993_into_the_wild_1.html

この記事が世に出ると、編集部に大量の投書が届き、なかには「マッカンドレスを殺したのは彼の無知であり、それはアメリカ地質調査所の四分儀とボーイスカウトのマニュアルがあれば、正されたはずです。」というような非難も数多かった。

批判はまっとうなものだと思う。
彼は雪解けで増水した川を渡れず、足止めされたために餓死に至るのだが、数Km上流に歩けば渡河できる手動ゴンドラや食料が備蓄された避難小屋があることも知らなかった。まともな地図を持っていなかったから。

が、それでもクリス・マッカンドレス的な行動が支持される理由はあるし、わかる。

クラカワーは自分が「やみくもな情熱」に突き動かされていた若いころの体験を通じて、クリスの動機や心情について解釈を試みている。
なかでも、「青春期には死は(…)抽象的な概念としてとどまって」おり、「死の間際までそっと近づいていき、崖っぷちから覗きこまずにはいられな」いが、「それは、死の願望とはまったく異なるもの」だという説明は、ぼくには納得できるものだった。


2016年06月1日 更新:
ジョン・クラカワーはその後もクリス・マッカンドレスの死因について探求を続けているようだ。

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