第4回アックゼロヨン・アワード授賞式で考えたこといろいろ
第4回アックゼロヨン・アワードに参加してきた。
第4回アックゼロヨン・アワード表彰式を行いました | 第4回 アックゼロヨン・アワード
http://www.acc04.jp/news/200909081857.html
弊社(アークウェブ)が制作したアミタ株式会社様のサイトが「入賞」を果たしたため。弊社が作ったサイトのこのアワードへの応募は初めてで、なので当然入賞も初。
このサイトが入賞して本当によかった。ぼくにとってアミタさんは、仕事の枠を超えて高い関心を持ち尊敬できる顧客だ。スタッフにもそれを何度も伝え、また「この顧客のために何かしたい」という思いを、サイトの表現や機能などとして落とし込むことにがんばったプロジェクトだった。
以下、アワードに参加しての感じたこといろいろ。
まずは28人の審査員の方々に、最大限のリスペクトを。
今回の応募サイトは145サイトで「一サイト20分としても全部見るのに48時間かかる」という森川さん(本ウェブ協会理事長)のお話にもあった通り、アックゼロヨンの審査に関わった人の労力はすごい。頭が下がる。
今回幸運にも受賞側にまわることができて、こういう場で評価をいただけることに制作側はとても励まされるなぁと感じた。アワードが継続的に行われるお陰で、日々のウェブ制作をがんばれる、そんな人は沢山いるんだろう。
改善してほしいこともいくつか挙げておく。
- 授賞式の構成、やや平板では? と思った。受賞サイトが38サイトもあり、三部に分かれているとはいえ賞状の授与・挨拶が延々続くのは結構ダレた。せめてバックグラウンドに受賞サイトのキャプチャ画像を映すなどしてくれたら。また、途中に講評や特別賞をはさむなどの変化をつけるとか?
- 受賞者の挨拶、もっぱら「一般的謝辞」が多かったのが残念。主にウェブ担(このアワードでは「サイト権利者」)の方からは、サイト立ち上げのねらいや反響についてリアルな話が少しは出たが、制作会社の人は「ありがとうございました」の連呼が多かった。適切なモデレーターを介してサイトの特徴や苦労した点など話してもらえたら、もっと面白く、わざわざリアルで集まる意味も高まっただろうになぁ、と。
- 上述の点も含め、ウェブのアワードなのにウェブの匂いがあんまりしない点。いろんな事情があるのかもだけど、Ustream中継やるとか(あ、Jストリームが後日ビデオ配信するのか。うーん)。
「アックゼロヨン」のそもそものスタート地点である「アクセシビリティ」について、いくつか言及があったので、まとめておく。
森川さんの講評、耳を傾けるべき点が多く必死でメモったもの(要約なので誤解釈あるかも)。
- このアワードの評価は審査員が6項目(デザイン、情報構造、技術、ユーザビリティ、アクセシビリティ、アイディア)に対してつける10点満点評価の平均点の合計だが、「デザイン」と「アクセシビリティ」を比べると、後者の平均点は約1点低かった
- デザインと違い、アクセシビリティはJIS X 8341-3やWCAG 1.0など明確なガイドラインを元にした評価であり、数値化もずっとしやすい。制作時の対応も同じはず
- ウェブサイトの多様なステークホルダーのことを考えれば、対処法が明確なアクセシビリティ対応は、もっとやるべきだ
また審査員のコメントとして、NORIさん(伊藤紀之さん)のこんな所感も紹介された。
- Flashのアクセシビリティ対応には「膨大な想像力」が必要。とはいえ、あえてFlashを使うならアクセシビリティを考慮してほしい
- Flashのアクセシビリティ対応を「まったく知らない」制作者と「知ってしまったから挑戦しなければいけない」制作者がいるだろう
- 応募サイトのレベルは昨年を「0」とすれば今年は「1」。Flashのアクセシビリティ対応を審査対象にできるのは、うれしい
これらの話で、ぼく自身は改めてこんなことを考えた。
- アックゼロヨンの応募サイトは、アクセシビリティの面でも高い意識を持って制作されたものが多いだろう。しかし現実は、たとえば上場企業のサイトを無作為に抽出したらアクセシビリティを考慮したサイトは半分、いや1/3にも満たないんじゃないか
- 日本には「JIS(日本工業規格) X 8341-3」がある。ここまで守られない標準規格ってどんな意味があるんだろう?
- 制作会社だって馬鹿ではなく、企業のウェブマスターだってステークホルダーに無頓着であるはずがない。しかしアクセシビリティ対応をする強いインセンティブがないのだ。草の根の努力も大事だが、より重要な問題は、全体的な仕組みやエコシステムだ
この問題については継続的に考えたい。考える。
アックゼロヨン、来年も出席できるようにがんばろう! というむき出しの決意を表明し、終わります。
おめでとうございます
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イントゥルース林
2009年9月9日
中野さん、昨日はありがとうございました。
審査所感についての部分では、ガチガチに上がってしまって、聞き取り辛かったのではと思います。すみませんでした。
アクセシビリティ軸についてなんですが、これはアイディアとかデザインとか…「一体どうすればいいんだ?」みたいな暗中模索的な作業に比べて、対応しやすいので、頑張って下さいと伝えたかったのです。
アクセシビリティよりも大きな概念としてユニバーサルデザインを考えると、UIやIAの分野でも、もっともっと使いやすくすることはできると思います。けど、最低限、せっかくガイドラインがあるのだから、これだけは守ってほしいと思います。
おっしゃるように「強いインセンティブ」というのは、草の根ではなく行動を起こしていきたいと考えます。Section508のように法的な縛りを作る…なんてのがてっとり早いのかも知れませんが、僕は「体罰」的なしつけじゃなくて、違う方法がないかと思っています。
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森川眞行
2009年9月9日
もうひとついいですか。企業にとって「アクセシビリティ対応をする強いインセンティブ」ってのは、やはり企業の利益に直結するものでなくてはならないと思います。アクセシブルで使いやすいことが、企業の利益に直結するのだ…という理解を経営者が示すと大きく変わると思います。
もちろん、公的なサイトの場合は「社会的責任」ですよね。納税者や市民がアクセシブルでないサイトに対しては、改善を要求できるといいですよね。
…しかし、これも予算の少ない自治体を考えると、可哀想というか難しい課題であると思いますが。
※いちどじっくりお話したいですー(アクセシビリティWGとか)
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森川眞行
2009年9月9日
あ、しつこくてすいません。あと「せめてバックグラウンドに受賞サイトのキャプチャ画像を映す」なんですが、もちろん主催者としてはやりたかったのですが、諸事情がありまして…。これはメールしますね。
最後に言いました「これからもチカラを貸してください」…なんです。
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森川眞行
2009年9月9日
どもども。ちょっとお見かけしたので声をかけようとしたら、最後の懇親会ではもう退席された後だったようで・・・
アックゼロヨン、会を重ねるごとにレベルが上がってきているのはすごいことだと思います。審査する甲斐もあるものですし、勉強にもなります。
しかし、おっしゃるとおり、アックゼロヨンに出してくるサイトでさえ、Flashのアクセシビリティをまともにしているのは、少ないですね。
していないのが前提かと思うほどで・・・これは、酷いというレベルです。
ただ1ついえるのは、どんな世界でもバリアを乗り越えたくなるコンテンツは必ずあるもので、そのすごさを今回は感じました。賛成はできないですが、立派だと思います。
そして、Flashはそういうコンテンツを作りやすいツールとなりうる感じがしました。
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NORI
2009年9月10日
@林さん
ありがとう!
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nakano
2009年9月10日
@森川さん
長文のコメントありがとうございます。
> 僕は「体罰」的なしつけじゃなくて、違う方法がないかと思っています。
なるほどー。期待しています。もちろん何かあればお手伝いさせてください。
> 企業にとって「アクセシビリティ対応をする強いインセンティブ」
> ってのは、やはり企業の利益に直結するものでなくてはならないと
> 思います。アクセシブルで使いやすいことが、企業の利益に直結
> するのだ…という理解を経営者が示すと大きく変わると思います。
そうなんですよね。
で、そこに至る上での悩みどころが、「企業側にどう知ってもらうか」という啓蒙の部分なのでは。
JIS Xが出たとき、公のサイト向けには「みんなの公共サイト運用モデル」などがあったようですが、あれの民間版的な取り組みが必要なんじゃないかな、と思ってます。
授賞式の構成については、諸事情ある中コメントをいただき、ありがとうございました。
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nakano
2009年9月10日
@NORIさん
後(仕事ですが)があったので…懇親会は失礼しちゃいました。
> ただ1ついえるのは、どんな世界でもバリアを乗り越えたくなる
> コンテンツは必ずあるもので、そのすごさを今回は感じました。賛成
> はできないですが、立派だと思います。
>
> そして、Flashはそういうコンテンツを作りやすいツールとなりうる
> 感じがしました。
なるほどー。沢山のサイトを審査された方の言葉は重みがあります。
そうですね、確かにコンテンツありきです。
が、障害の種別によってはそのコンテンツの存在を認知することすらできない人もいるわけで、そこのところは本当にちゃんと考えたいです。
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nakano
2009年9月10日
はじめまして。加齢黄斑ドットコムでアワードに参加させていただきました関根と申します。
> 企業にとって「アクセシビリティ対応をする強いインセンティブ」
> ってのは、やはり企業の利益に直結するものでなくてはならないと
> 思います。アクセシブルで使いやすいことが、企業の利益に直結
> するのだ…という理解を経営者が示すと大きく変わると思います。
この件について私は次のようにいつもお話ししております。
・企業にとって、顧客と企業を支える人は高齢化が進んでいる。
・インターネット利用人口を見ても、視力が徐々に低下する40代以上(私も)のアクセシビリティを必要としている人が半分もいます。
・一般企業の対象は株主、取引先、顧客であり、40代以上からどちらかといえばご高齢の方々が対象となります。
・一般企業サイトの利用者は新卒採用を除けば、よく20代が利用して話題となっているWebサイトとは異なります。
特に私どものような会社の顧客は高齢者や病気の方、更にはご高齢の医療従事者の方々も含まれるため、アクセシビリティに積極的に取り組むのは当然のことです。
このようにお話しをさせていただきながらWebサイトを運営してきました。
その結果、あるサイトではほとんどの方に読みやすいと評価されるまでになっております。
更に説明を簡単にする際には、次のように例えています。
毎日利用している駅のエレベーターや通路がバリアフリーに出来ていることで誰もが使いやすくなっていることを思い出してください。Webのバリアフリーがアクセシビリティですが、これを障害者に限定しないで普通に誰にでも当てはまると考えることこそ大切だと思っております。
更に、制作側の若い世代の方々には、「見に来てくださる方々は高齢者が多いことを忘れてはいけない」と常々話しています。私が40代なので説得力があるかもしれません(笑)。
最後に、今回の加齢黄斑ドットコムのアクセシビリティの設計をしながら、もしかするとWebサイトのアクセシビリティは ”見るもの” に限定されず、現時点で誰もが料理をしながらテレビを聞くように将来的にはPCというAgentを通じて ”音声ブラウザーで聞く” ための物にも成り得る可能性を感じました。ぜひ加齢黄斑ドットコムを聞いてみてください。
長文失礼いたしました。
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関根
2009年9月13日