「ヴィジット」(M・ナイト・シャマラン)感想:大作ではないが復調の兆しか

Posted on 2017年1月26日. Filed under: 映画 | タグ: |

映画「ヴィジット(M・ナイト・シャマラン監督)」、ブルーレイで観た。

才能というのは量的に計れるものではないと思うが、よくいわれる“枯れる”は、本当にあるんだろうか。
彼を「シックス・センス」の監督だと思っている人はとても多い。が、(今振り返ってみれば)黄金期は「アンブレイカブル」「サイン」「ヴィレッジ」だと思う。「エアベンダー」を撮ったときはもう終わりだ…と思ったが、この映画を観て、復調の兆しがあるかも、と感じた。

大作ではない。IMDbの評価も6.2/10だ。
音楽がジェームズ・ニュートン・ハワードじゃないのも一つ魅力を削ぎ落としているかも。

しかし彼はやはり巧いのだ。画面の「間」にも「無音」にもことごとく意味があるような、“映画的”な映画をつくれる監督だと思う。

あと、彼の底流にあるテーマは、“壊れ(かかっ)た家族の修復”なんだなぁと今回も改めて思った。

ディスクに収録されていたインタビューで彼はこんなことを語っていた。

「原点回帰」
「キャスティングは監督の仕事の8割」
「ぼくがバスケ選手なら、ストリートバスケに挑んだのが本作」

納得できる言葉だなぁ。

彼にはまだ期待できそうだ。まだ新作が控えているようだし。

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「裏切りの街」(監督:三浦大輔 主演:池松壮亮×寺島しのぶ)を観た

Posted on 2017年1月15日. Filed under: 映画 | タグ: |

映画「裏切りの街 」(監督:三浦大輔 主演:池松壮亮×寺島しのぶ)を観た。

去年12月に「何者」を観て監督に興味を抱き、DVDで「愛の渦」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を観てさらに興味が深まり、この新作(といっても元はNTTドコモのdTVというサービスのために制作されたドラマ)が短い間だけ劇場公開されていると知った。が、東京ではもう終わっていたので、仙台まで行った。

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フリーターと主婦の不倫を描いた映画だ。

この監督は、性愛を主題に人間の心の機微を描くのが巧い。人が笑い話にしたり、記憶の底に閉じ込めてしまったりするようなことを観察する目線があるからこういう話がつくれるんだろう。だからこれを「不倫映画」と括ってしまうと、沢山のものがこぼれる。

主人公(池松壮亮)がこんなつぶやきをするシーンにハッとした。

“俺って俺ってひでえ人間だなぁ、って思う。
だけどそう思った後に、俺って意外にやさしいんだなぁ、って思ったりして。”

不倫の二人はそんな話をした後で、下着姿のままテレビに映るサンドウィッチマンのトークに笑う。

少し思い当たる。あるある! すぎはしない(この人間観察ヤバいなってほどでもない)。身に染みすぎるというわけではない(そこまで教訓的でもない)。でも、ただこういうつぶやきが身体にすうっと入ってくる。
いわば、絶妙な味つけのスープ。人間はこういう卑下や憐憫や自己正当化の間をうろうろしながら生きているんだな、と気づかされる。

このシーンでふと思い出したのは、20代の頃読んで深い印象を与えられたジェイムス・ジョイスの「死者たち」だ。どんな小説か、深く心に刺さった理由は何かなどは割愛するが、さっき後半部分を再読してみた。

巻末の解説で、訳者である高松雄一氏がジョイスの手法をこう評していた。

「『事物の塊が、その本質が、うわべの衣装をぬぎすてて、われわれに飛びかかる』啓示の瞬間を捉えようとして」いる、と。

それに少し近い。

“ちなみにこれ、ユニクロだから”(佐藤仁美演じる寺島しのぶの妹)とか、この映画の光景の中だからこそ水を得ている台詞が他にもいくつかある。

重すぎはしない。でも軽くもない。なんだこの味わいは…という複雑味のある映画だった。

観客はほとんどいないのでは、という予想に反して、2割程度は入っていた。ぼくの右隣はシニア夫婦、左隣は20代女性、その隣は30代男性だった。仙台、文化度高いなと思った。

彼らがこの映画を観て何を思ったのか、少し話を聞いてみたかった。

この日仙台は雪がちらつく天気で、映画館を出た20時過ぎには2~3cm積もっていた。

適当に入った店で喜多方の「飛露喜」と共に仙台牛の刺身や青森・横浜町のナマコを食べ、駅前泰陽楼で麻婆豆腐焼そばを食べた。

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映画「インビクタス」:王道スポーツドラマであり、ネルソン・マンデラの成功プロジェクトの話

Posted on 2010年1月27日. Filed under: 未分類 | タグ: |

アムネスティ・インターナショナル日本のメルマガ経由で応募した映画「インビクタス 負けざる者たち」の試写会&トークショーに行ってきた。

27年間の投獄(マンデラを知っている人ならピンと来るであろう、「ロベン島」という言葉が何度も登場する)から釈放され、南ア初の黒人大統領となったネルソン・マンデラが、95年に自国で行われるラグビーのワールドカップで、代表チーム「スプリングボックス(Springboks)」(ほとんど白人のチームであり、黒人からは嫌われていた)を勝利させるために鼓舞する、という話だ。

冒頭に、池田香代子さん(「世界がもし100人の村だったら」再話者)、竹田圭吾さん(「ニューズウィーク日本版」編集長)、寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル日本 事務局長)のトークがあり、その後に映画という体裁。

この映画にこめたクリント・イーストウッド監督の思いについて、池田さんはご自身のブログにもあるように「国家とは一線を画してきたイーストウッドが、真正面から国家を描き、しかも国家を寿(ことほ)いだのです」と解釈され、竹田さんは「むしろ混迷する今の南アへの皮肉ではないか」と感想を述べられた。一方、寺中事務局長の、

「アムネスティ・インターナショナルはもちろん投獄中のネルソン・マンデラ氏を支援していたが、所属政党のANC(アフリカ民族会議)が「暴力も辞さない」という姿勢を取ったことから、(通常アムネスティが被支援者を呼ぶ)「良心の囚人」としてサポートしてはいなかった(政治犯としてサポートしていた)。このことは、内部でも「形式的だ」という議論があった」

という話も興味深かった。

関係ないが、アムネスティ・インターナショナルという団体の活動の重要さについてちょっとだけ。
長年中国で投獄・虐待され続けたパルテン・ギャツォというチベット僧がいる(彼を描いた映画が「雪の下の炎」)。彼が釈放された理由には、イタリアのアムネスティなどの働きかけがあったのだという。ぼくはこれを知り、政治的な考え、宗教上の信条、国籍、人種などを理由に拘束される人々の人権を守るアムネスティの活動はとても有効なものなんだ、と気づかされた。

映画の話に戻る。
(さらに…)

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[movie]GONE BABY GONE

Posted on 2008年12月30日. Filed under: 未分類 | タグ: , |

俳優が監督に転進したばかりの第一作目の映画って、その俳優の演技力とか声望にかかわらずみるべき秀作が多いような気がするんだけど、ベン・アフレックが監督した「ゴーン・ベイビー・ゴーン」、思った以上に重かった。

ゴーン・ベイビー・ゴーン -GONE BABY GONE-
http://www.movies.co.jp/gonebabygone/

Amazon.co.jp: ゴーン・ベイビー・ゴーン [DVD]: ベン・アフレック, ケイシー・アフレック, ミシェル・モナハン, モーガン・フリーマン, エド・ハリス, エイミー・ライアン: DVD
http://www.amazon.co.jp/dp/B001BO8HH2

子どもの未来は誰が決めるのか?
どんなにひどい親でもあっても、子どもは親のものか?
ひどい親からとりあげられた子どもは、大人になってそれを知ったら責めるだろうか?

という問いかけが詰まった作品。
サスペンスとしてよくできているし、人間もよく描かれている。

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[映画] イン・トゥ・ザ・ワイルド (2.5/5点)

Posted on 2008年9月15日. Filed under: Roundup | タグ: , , |

映画「イン・トゥ・ザ・ワイルド」を観た。以下、感想。

映画『イントゥ・ザ・ワイルド』オフィシャルサイト
http://intothewild.jp/top.html

当然内容に言及しているので、観るつもりの人は気をつけて。

この映画の原作は、登山家でジャーナリストであるジョン・クラカワーが書いた「荒野へ(Into The Wild)」。アメリカではベストセラーになり、放浪の末にアラスカで死んだ若者クリストファー・マッカンドレス(Christopher McCandless)を英雄視する人々も多いとか。
Wikipediaにも項目がある。

なお、Wikipediaの以下のページには、彼の遺体と共に発見されたカメラ内に残っていた最後の記念撮影風の写真がある。そういうのを見たくない人は注意。

Christopher McCandless – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Christopher_McCandless

この映画を観ていてまず面食らったのは、クリスが旅するアメリカの風景、自然の存在感の大きさだ。映画なんだから視覚に訴えてくるのは当たり前だが、本を読んでわかったつもりになっていたクリスの旅について、より身体(からだ)レベルでわかったような気がする。彼は成績がよく、社会問題への関心も持ち、内省的な若者だったが、高校時代はクロスカントリー部のキャプテンを務めるなど身体能力も高かった。その彼が挑んだ場所はこういうところだったんだ、ということがよく実感できた。

クラカワーの「荒野へ」にもその記述はあるが、映画の方が大きく踏み込んでいる点として彼の両親の不和が挙げられる。で、皮相な見方をすればクリスの死は「両親に怒りを抱いた若者が家を飛び出し、無軌道な旅の末に招いた悲劇だ」といった感想も抱けてしまう。
でもそういう類型化をする前に、少しでもクリスについて調べてみるといいと思う。

映画では、アラスカでクリスがジャック・ロンドン、トルストイ、ソローを読みふけったこと、とくにソローの「ウォールデン(森の生活)」を読んでいたことや、パステルナークの「ドクトル・ ジバゴ」を読みどこにアンダーラインを引きどんな感想を書いていたかといった点にはほとんど触れない。内面の描写が足りないのだ。

ラストシーン。クリスの最期の描き方はかなり強烈だ。息絶える瞬間までをリアルに、というより映画ならではの表現を総動員して恐怖を煽り立てる。えげつないと言ってもいい。このシーンに感情移入してしまうと、以後しばらく気分が落ち込むほどだ。

クリスの死因について映画では、彼が食用のアメリカホドイモと似た有毒植物を食べたために下痢をして衰弱し、悪態をつくシーンがある。が、これは彼の死後出てきた推測であって、まして彼がそのことに気づいていた証拠はない。つまりフィクション。

こういう演出が必要だったのか? と思う。「お父さんお母さんの言うことを聞かない悪い子はこうなります」という教訓映画のようじゃないか。

この映画は、5点満点中2.5点。

ついでに。

クラカワーが「荒野へ」の元となる記事を”Outside”誌に書いたのは1993年1月。検索してみたらウェブサイトに掲載されていた。

Into The Wild – The Story of Chris McCandless by Jon Krakauer | Outside Online
http://outside.away.com/outside/features/1993/1993_into_the_wild_1.html

この記事が世に出ると、編集部に大量の投書が届き、なかには「マッカンドレスを殺したのは彼の無知であり、それはアメリカ地質調査所の四分儀とボーイスカウトのマニュアルがあれば、正されたはずです。」というような非難も数多かった。

批判はまっとうなものだと思う。
彼は雪解けで増水した川を渡れず、足止めされたために餓死に至るのだが、数Km上流に歩けば渡河できる手動ゴンドラや食料が備蓄された避難小屋があることも知らなかった。まともな地図を持っていなかったから。

が、それでもクリス・マッカンドレス的な行動が支持される理由はあるし、わかる。

クラカワーは自分が「やみくもな情熱」に突き動かされていた若いころの体験を通じて、クリスの動機や心情について解釈を試みている。
なかでも、「青春期には死は(…)抽象的な概念としてとどまって」おり、「死の間際までそっと近づいていき、崖っぷちから覗きこまずにはいられな」いが、「それは、死の願望とはまったく異なるもの」だという説明は、ぼくには納得できるものだった。


2016年06月1日 更新:
ジョン・クラカワーはその後もクリス・マッカンドレスの死因について探求を続けているようだ。

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[映画] シャマランの「ハプニング」は残念(ネタバレ)

Posted on 2008年8月7日. Filed under: ボランティア | タグ: |

どうしても観てしまいたかったM. ナイト・シャマランの新作「ハプニング」をレイトショーで。

まず断っておくと、ぼくにとってシャマランは新作を必ず映画館で観たい監督の一人。つまり、日本でも(最近は北米でも)劣勢のファンの一人。
シャマランの「サイン」はベスト50に入る映画だし、「アンブレイカブル」は何度も観なおしている。「ヴィレッジ」も忘れがたい。

シャマランが好きだというと白けた顔をする人には、「いったい映画に何を求めてるんだ。映画ってのはもともとケレン味いっぱいの娯楽だし、ハッタリと映画らしい醍醐味をこのレベルで融合できる監督は他にいない!」と反論する覚悟があったりなかったり。

というわけで、以下シャマラン派の感想であり、レビュー。

当然ネタバレ。
読む人は自己責任でどうぞ。

  • 評価は2/5(星2つ)。不満があれこれあり、総合的にはシャマランファンのぼくでも擁護できない出来栄えだと思う。
  • 今回ファンがいちばん驚くのは、シャマランといえば、のラストのドンデン返しがないことだろう。
    が、これは一晩寝て考えてみると大きな失点にはならないかな。過程が楽しめさえすれば。
  • 全体的にグロすぎる。シャマランの美学は寸止めの演出、やるならここぞというシーンでだけ、じゃなかったのか。
  • 都市のシーンが多いせいもあるのか映像がうるさいし、シーンの切り替わりも多いせいか「雑」な印象を受ける。これでは、James Newton Howardのすばらしい音楽が活きない。後半音楽で盛り上げているシーンもあるが、無理やりという印象を受けた。
    あふれる「静」とほんの少しの「動」、静かだが濃密な画面、それゆえの「映画を観ているぞー」というシャマラン映画特有の喜びがなく、今回かなり通俗的だと思った。
  • クライマックス、「過度なCGやSFXに頼らずに現実からズレたシチュエーションをつくり、そこでの人間の絆の修復を描く」というシャマランらしいシチュエーション。これ、彼の映画には結構出てくるパターンだが、特に似ているのは「サイン」か。
    今回も絆を深める3人はちゃんとした家族ではなく、Adoptedなのだが、この点も「サイン」と一緒だ。彼のこの組み立てには、なにか狙いやメッセージがあるんだろうか? それとも「典型的な家族」などとうに崩壊したアメリカ人の当たり前の姿? でもシャマランってインド系だから大家族なんじゃないの? とか。
  • シャマランは瞳がきれいな女優を使う。というか彼の映画では人の目が活きる。
  • 今回もシャマランのカメオ出演あり。ただしちょっと意外なかたち。
  • 「ハプニング」は残念だった。彼はまだハリウッドで映画をつくれるのかなぁ。次回作も観たい。
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[映画] 「クライマーズ・ハイ」、面白い!

Posted on 2008年7月12日. Filed under: 未分類 | タグ: |

原田眞人は、新作を必ず追いかける映画監督の一人。

この「クライマーズ・ハイ」では、宣伝でも原田眞人の作品であることはあっさりとしか謳われていないけど、ぼくは原田監督なので観に行った。

映画『クライマーズ・ハイ』公式サイト
http://climbershigh.gyao.jp/

で、この映画は面白い!

1985年の日本航空123便墜落事故をテーマにした映画で、同便が群馬の山中に落ちたことから、未曾有の大事件の取材に執念を燃やす地方紙の記者たちを描いたもの。

このような「緊張下にあるプロフェッショナルやビジネスパーソンたちの、異常にハイテンションでギスギスした群像劇」を描かせたら、この人以上に巧い人は日本にはいないんじゃないかと思う。群像を描きながら一人ひとりの個性がちゃんと描き分けられ立っているのも、原田作品ならではか。いわゆる「その他大勢」的キャラがほとんどおらず、全員が動いているのがすごい!

ほかにも原田映画が刺激的なのは、早口で聞き取りづらいうえに被りまくる台詞、自然体のようだが細部にリアリティがある演技、ドキュメンタリーのようなカメラワークなど、日本映画の主流のほとんど逆を行っているんじゃないかと思える点。

で、「飄々としていながらやるときにはやる若者」(中央のメディアと貧しい装備で戦う若手記者)、「頑張る女」(スクープに執念を燃やす女記者)、そして「俗物の化け物のようなラスボス的権力者」(今回は山崎勉が地方新聞の社主として登場)、「日本を捨てる日本人」、と、原田映画では定番っぽいキャラクターが今回も要所に配されている。

さらに「中央対周縁」「反権威・権力」「日本の旧制度への疑い」といった、キコク(帰国子女)っぽいアウトサイダー的価値観は今回もいろんな点に感じられて、そのへんもうれしかった。

残念ながらこの映画、メッセージ性よりエンターテイメント性が勝っているため後に何か残るような感じは薄いが、150分以上という長い映画ながら退屈は一度も感じなかった。

あー、原田映画の最高傑作「KAMIKAZE TAXI」を観なおしたくなった!

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