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震災小説「無情の神が舞い降りる(志賀 泉)」を読んだ

Posted on 2017年3月12日. Filed under: book |

東日本大震災を描いた小説「無情の神が舞い降りる(志賀 泉)」、読了。

作者は福島県南相馬市小高区出身で、2004年に太宰治賞を受賞している。
別に3月11日に読もうと決めていたわけではなく、福島民報で知ってAmazonで注文したら金曜に届いたので今日読み切った。

中編2つ。
表題作は、原発事故が起こって立ち入り禁止となった町(小高区がモデルだと思われる)に、寝たきりとなった母親のために一人残る「俺」の話。誰もいない町で、小学生の頃の悲しい思い出がある場所を訪ね(不法侵入し)、そこで動物救護ボランティアの女と出会い、主人公の膠着した心が動き出すというストーリーだ。

もう1つは「私のいない椅子」。
沿岸の町で被災し、「阿武隈を裏側から」見る町に避難してきた女子高生の話。あるきっかけで彼女を主役にした映画制作の話が持ち上がる。自分とヒロインを重ね合わせ出演に応じた彼女だったが、複数の人間の思惑で脚本は書き換えられていく。「海が見たい」というタイトルは「私を故郷に帰して」に変わる。「私は、こんな風に考えたことは一度もないから」と彼女は反発する。

「震災って大きな出来事だけど、私たちひとりひとりは小さな出来事で泣いたり笑ったりしてるんです。…つまらないことで傷ついたり、ちょっとした偶然に励まされたり。…誰でも同じはずなのに、どうして映画やドラマだと話を大きくしちゃうんだろ」

この言葉は、去年と今年、相馬農業高校飯舘分校やふたば未来学園の演劇を観てハッとさせたられた高校生たちの“震災観”と通じているなと思った。

表題作は閉塞感が強かったが、こちらは話がよく動き、主人公に生命感もあって面白かった。

部外者のぼくらは「典型的な被災者」という枠に個々の人たちをはめ込もうとしてしまいがちだ。でも、どんな大きな災害であれ人が経験し感じることは人のそのときどきの状況との掛け合わせによって生まれるものだ。

静かになった町に奇妙な安堵感を抱くこともあるだろう。
避難するバスの車中で隣に座った人が意中の人だったら、高校生なら胸がときめくかもしれない。

震災という大きな主語に覆い隠されてしまうような人の生き様や思いを表出させるには、小説という形態はとても意味があるのではないか、と改めて思った。

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「これだけ! KPT」読書メモ(Key: 改善は仕事の一部, よいところをさらによく, 同意と合意, 言ったもの負け)

Posted on 2017年2月24日. Filed under: book | タグ: , |

これだけ! KPT」(天野 勝)を読んだ。頭の整理ができた。自分用にメモをまとめておく。

KPTの効果と使いどころ

  • KPTはメンバーと周囲の人々の人生の時間の質を上げる
  • KPTで学びを整理する
  • KPTで現状を打破する
  • KPTをカイゼンに活かす
  • 改善活動は仕事の一部。そして、「ダメなところを直す」だけでなく、「よいところをさらによくする」も含まれる

「あなたのチームで企画した商品を、会社の上層部にプレゼンテーションし、そこそこの感触を得られたところとします。「そこそこの感触」で終わったということで、ミスもないのでそのままやり過ごしてしまいがちですが、このような場面でこそ、ふりかえることをオススメします。結果が散々だった場合は、ふりかえるのが当たり前だと思うでしょう。しかし、結果が散々だった場合は、それまでの過程で発生していた問題点を解決せずに過ごしてしまっていることがほとんどですので、ノウハウとして抽出できることがあまり多くない可能性があります。一方で、「そこそこの感触」を得られたということは、そこにたどり着くためのノウハウが多く埋もれているものです。

  • KPT話法は、部下との目標管理面談の際などにも活かせる

KPTのやり方とコツ

  • KPTは、まず1週間から始めてみるのがよい。1週間の計画を立て、活動し、1週間後にふりかえる。次第にもっと長い期間でPDCAを回せるようになってくるはず。
  • 付箋紙に意見を書く時は、1枚に1つの意見を書く。付箋紙に意見を書くことで「物質化」し、物理的に指差したり、移動したりできるようになる。
  • 他の人が行ったことを書くようにする。自分でやったことをKeepとして挙げるのは難しいが、他人からは目に留まりやすいもの。
  • 人同士向かい合って話すよりも、問題点を壁などに貼り出し、その問題に対して全員が向かい合うようにして話をすると、建設的な話し合いになりやすい。
  • プロジェクトをふりかえるとき、評価を五本指(5/5ならパー)を皆で出す。指が1~4本、つまり満点ではない人たちに、「その数にした理由を教えてください」と聞く。その意見をKeep、Problem、Tryに分類しながら書き出す。
  • Pを「問題」と言うと、意見が挙がらないことがある。「困っていること」「工夫の余地がありそうなこと」「不満に感じていること」のように言い換えると気軽に意見が出てきやすい。

「アクションに対して誰が主責任で行うかを決め、チームで合意してください。 合意と同意は異なります。主責任者を決めて、その人に丸投げしてしまい、その人が困っていたとしても周りが助けないというのは、合意ではありません。 合意とは、同意に加えて「全面的にサポートするという意思」まで含んでいます。

「余計なことはやりたくありませんので、「Tryは挙げないほうがいいな」ということになってしまいます。このような状況を「言ったもの負け」と呼びます。KPTそのものよりも、ふりかえり会を行うチームとしての成熟度が低いことが原因です。」

KPTのメリット

「チームに任せるのはなかなか難しいと考えるリーダーは多いようです。このような、「任せられないチーム」を「任せられるチーム」に変えていく場面でこそ、KPTは信じられないほどその力を発揮するのです。

  • KPTが素晴らしいのは、「繰り返して行うことでその効果がより大きくなる」こと。 前回のTryが次のKeepになり、どんどん蓄積されていく。ナレッジマネジメントの仕組みが実現されていくことになる。
  • アイデアに「いい名前」を付けることができれば、アイデアはぐっと伝わりやすくなり、実際に浸透しやすくなる(例:「ニコニコカレンダー」)。

「属人化が無くなり、最終的に誰でもがどの作業でも行えるようになると、ToDoは人に関係無く、すべて共通であるタスクボードで運営できるようになります。ToDoにある、作業という行列を複数の窓口で処理するような形になるので、作業のスループットが最も早くなります。駅の発券所や銀行のATMなども、このような形になっていて、行列に並んでいる人の待ち時間短縮が行われています。」

「可視化」と「見える化」

  • 見える化とは「異常を見えるようにして行動を誘発する仕組み、および活動」のこと

「見える化に近しい言葉に「可視化」というものがありますが、こちらは、見えるようにしただけにすぎません。 見える化は、これに加えて行動を誘発する仕組みが備わっているのです。世の中で一般的に使われている「見える化」は、「可視化」を指しているように私は感じます。」

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読書メモ:「町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト」(Key: 公民連携, 稼ぐインフラ, えぐねランドスケープ…)

Posted on 2016年12月15日. Filed under: book | タグ: , |

町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト(猪谷千香) 」、読了。

さすが元新聞記者、書く力があるなぁという印象。

「地方創生、地域活性化、まちづくり。さまざまなことが言われるが、オガールプロジェクトとそれに関わる人たちを見ていると、言葉遊びにすら思えてくる。それぐらい、オガールプロジェクトは稀有な存在である。(…)不謹慎かもしれないが、たとえ日本が滅びても、紫波町だけは生き残るのではないかと、半ば冗談、半ば本気で思ったほどだ」

と筆者があとがきで熱く語っている岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」について、キーパーソンなどへの取材を軸に多面的に紹介している本だ。

ちなみに「オガール」について、この本を読む前に名前ぐらいは知っていた。で、読む気になったのはこんな理由だ。台風10号で被災の宮古市にボランティアに行った際、「紫波町社会福祉協議会」のマイクロバスや、ビブスを着た人を何度も見かけた。その「紫波町」の町づくりってどんなものだろう…と気になった。

(さらに…)

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映画「何者」を観て、小説「何者」を読んだ

Posted on 2016年12月9日. Filed under: book, Movie |

おそらく今日(2016年12月9日)でロードショー公開が終わった映画「何者」を駆け込みで観て、

何者 – 映画・映像|東宝WEB SITE
何者

そしてすぐに小説を読んでみた。

何者(朝井 リョウ):Amazon

ネット上で感想の断片に触れたりして記憶に引っかかっていた。で、意外な面白さに驚き、ある点(後述)について確かめたくてすぐに小説も読んだ。
以下、そのざっくりまとめ。

「何者」とはどういう意味か

物語は、さまざまな考えを呑みこんで就職活動を戦い、内定を得ることで社会に認められよう、つまり「何者」かになろうとあがく若者5人を描いている(実はこのタイトルに込められたもう一つの含意は終盤に明かされるのだが)。いわば就活ドラマだ。

しかしこの映画はネット時代の我々は「何者」かと問いかけていないか?

この映画では小道具としてTwitterが非常にうまく使われている。原作の小説もそうなのだが、小説は物事をリニアにしか提示できないが、映画では人物の行動とTweet(つぶやき)がオーバーラップするシーンが度々ある。その内容がちぐはぐであればあるほど、今や当たり前になった「日常生活についてちょくちょくネットでつぶやく」行為に対する異化効果が(小説以上に強く)生じていると思う。

楽しい飲み会の中にいて、スマホでTwitterをやっているお前は「何者」だ?
エアリプを飛ばし合うお前と相手は、誰に向かって「何者」として振る舞っている?
裏アカで暗い本音を吐き出すお前は「何者」だ? 現実のお前と統合されているのか?

…といった問いかけが行われているような気がした。

人は何かを吐き出し、他者と相互作用することで自己を形作っていく。テクノロジーの進歩は人がアウトプットする「場」「形・長さ」「頻度」を変えてきた(例:Twitterばかりやっていると長文が書けなくなる≒まとまった長考をしづらくなる)。

空想、妄想、公言しづらい暗い想念などは昔の人も持っていたものだろう。が、それをネットで吐き出せるようになった。それによって即座に人とつながれるようになり強化してきた現代人の「自己像(何者であるか)」は、それ以前とはだいぶ様変わりしてきたはずだ。

映画の中で、主人公たちのフラグメント化した自己が交錯していく様子を見ながら、これは若者の就職活動(だけ)を描いたものではない作品になっているなと感じられた。

少なくともぼくはそう感じたのだが、次に、原作の小説からしてそこまでを意図して書かれたものなのか、それともこの映画の監督が広げたのか、映画のイマジネーショナルな表現から自分がそれを掬い取っただけのかを知りたくて、すぐに小説を読んでみた(A)。

メタミステリー/叙述トリックを描く演出に驚き

少し脱線。「何者」は叙述トリックの側面がある作品だ。
主人公のモノローグが多くを占めている小説版でなく、内面を抑制して描きつつ進んでいく映画版の方が、“それ”が判明したときの驚きが強い。それだけでなく、その暴き方は主人公が取り組んでいた演劇をモチーフにした演出になっている。非常にドラマチックで映画版の独壇場であり、圧巻だった(映画好きはここだけでも観る価値があるんじゃないかなぁ)。

三浦大輔という監督はなぜこういう引き出しを持っているんだろう、と調べてみた。

三浦大輔 (作家) – Wikipedia

なるほど、自ら「ポツドール」という劇団を主宰している、つまり演劇に深い造詣を持っている人なのか。納得できた気がする。

映画版のよさと小説のよさ

疑問(A)を確かめるため、映画を観た後で小説を一気に読んでみた。
登場人物たちの性格造形や心の機微がより細やかに書かれているなど、小説ならではの点がある。そして小説版から感じ取れたのは、瑞月の

「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」

といった熱量の高い言葉に象徴されるように、理不尽な状況に打ちのめされながら、何者かになろうと戦う若者たちの物語として読まれるべきだろう、ということだ。

とりあえずここまで。

(ここまではネット上のレビューなどは一切見ずに書いた。後で見てみる予定。)

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読書メモ「天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災」(南海トラフまで猶予わずか, 4・5歳児を伴う避難訓練は大事, など)

Posted on 2016年11月30日. Filed under: book | タグ: , |

「天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災」(磯田 道史)、読了。

著者は映画にもなった「武士の家計簿」の人。“ベストセラー歴史家”といってもいいかも知れない。

磯田さんが災害史にこだわる理由は、母方の家系が日本有数の津波常襲地であり度々多数の死者を出してきた徳島・牟岐(むき)から出ており、津波をかいくぐって生き延びてきた人たちの上に自分の生がある、と自覚しているからだという。

この本の主張は一貫しており明確だ。“歴史に学べ、そして備えよ!”というもの。

たとえば、東日本大震災についてはこう語っている。

「考古学者たちは震災前からサインを出していた。仙台平野に沓形遺跡という約二〇〇〇年前の弥生時代の遺跡がある。震災の五年前から本格的に発掘され、当時は二キロ(現在は四キロ)内陸のこの遺跡から津波の砂の層が発見されていた。砂は分厚いところで五センチを超えていた。集落は津波で徹底的に破壊され、再び人が住みはじめたのは津波から四〇〇年後という衝撃的な事実もわかっていた。つまり、仙台平野は約二〇〇〇年前、約一一〇〇年前(貞観津波)、四〇〇年前(慶長三陸津波)、そして二〇一一年(東日本大震災の津波)と、はっきりしているだけで、二〇〇〇年間に四回もの大津波に襲われている。いずれも内陸四キロ前後まで浸水。五〇〇年前後の周期性をもったきわめて反復性の高い自然現象であったことがわかる。「あの時津波の砂に学んでいれば」という後悔が今後あってはならないだろう」

以下、“これからに備える”という視点でいくつか引用しておく。影響を受ける地域の人、親兄弟がいる人は読んでほしい。
(さらに…)

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読書メモ「牛に化粧品を売る」 Key: チェンジレバー, 選択肢3つ, レジ3回作戦, 4色ペン顧客台帳, やってみせ

Posted on 2016年11月29日. Filed under: book |

牛に化粧品を売る」(長谷川 桂子)、読了。

この本、すごかった。よくあるタイプの営業本かな(…まぁそれでもヒントはあるだろう)と読み進めたけど、グイグイ引き込まれた。

「 牛に化粧品を売る 「生涯顧客」を作る、カリスマ販売員の接客習慣」(長谷川 桂子)

Amazonでこの本に星一つのレビューを付けている人がいる。確かに奇を衒ったノウハウはない(口をあんぐり開けて特別おいしいものが落ちてくるのを待っているようなタイプ向けの餌はない、という意味)。「たったこれだけのことじゃがー。おまえらなんで、たったこれだけのことができんのならー」(筆者の岡山弁での檄)といった内容だ。

以下、思い出し用メモ。

牛(を飼っているお爺ちゃん)に化粧品(毛髪スプレーと高級ブラシ)が売れた話。

  • 売ることは聞くこと。相手に何か一言でも喋らせること。愚痴や悩みにもお客様の次の興味は隠れている。最悪なのは、「こんな新製品が出たんです」と一方的に説明をしてしまうこと。

接客について。

  • スタッフの接客力の磨き方、大切なのは「やってみせ」。毎月商品を決めて販売数を競い合う。「誰が来ても声かけてみるから、私がなんで失敗したのか、見よんなさい。成功したら、どの言葉がよかったのかちゃんと考えて」。実際に売れたセールストークはトイレに貼っておく。
  • 雑談を商談に変える「チェンジレバー」。芸能人の話題が出たらチャンス。「そうね、あののりピーっていろいろあったけど、とっても綺麗ね。なんであんなに綺麗なのかな?(眉の引き方のセオリーへ)」「あの女優さん綺麗な白い肌よね。シミひとつないでしょ。何でかな?(UV対策クリームの話へ)」「どうして旬の魚ってあんなにおいしいんでしょう?(ビタミンB群のサプリメントの話へ)」
    ただしチェンジレバーは販売員一人でなくお客様と一緒になって引くべき。会話の中に相手の言葉を引き出す仕込みを。そうでないとお客様は「売りつけられた」と思ってしまう。
  • 初めてのお客様、まだ関係ができあがっていないお客様には三分咲きの笑顔で。「理想は、美智子妃殿下の笑顔ですね。少し歯を見せて、口角が上がって、慈悲深さがあふれている」
  • 安達太陽堂には口紅が450色もあるが、3色出して選ばせる(この“技”はすごい。対面販売という“圧”もあるだろうが、ECのリコメンドエンジンなどでも参考になるのでは、と思った)。
    「まず…今つけている色を覚えます。そして…一番お勧めしたい色をまず、頭の中で決めます。これが一本目。…そして次に、今、お客様がつけていた口紅やお化粧、洋服の好みから、お客様にとって無難な、お客様がいつも好んでいる色を選びます。これが二本目。最後に、このお客様は絶対にこの色は選ばないだろうなという、お客様の好みとは対極の、『突飛な色』を選びます。これが三本目です。…必ずと断言してもいいですが、お客様は、それまでに興味を煽られていたこともあって、1本目を選びます」

売るチャンスを最大限活用する(これこそリアル店舗の力じゃないだろうか)。

  • 桂子のレジ3回作戦」。
    安達太陽堂はレジから出口まで24歩、15秒かかる。化粧水を買ってくださったお客様と雑談をしながら出口までお送りし、「今日は暑いですね。…首の後ろも、日焼け対策してる?」。反応が返ってきたら店内に引き返し、日焼け止めをご案内(1回目)。もう一度お見送り。途中、「秋の新色の口紅が出たんですよ」とご案内。春先なら「花粉大丈夫?」(2回目)。3回目はさらに車までお送りする途中で、など。
    安達太陽堂の商品陳列は一番奥の化粧品カウンターから見て、右手は口紅・ファンデーションなどの化粧品、中央は雑貨、左手は漢方などの薬類というレイアウトにしている。最初のお買い上げの後、お客様の興味のありそうなコーナーを歩き、お勧めする作戦。「24歩15秒の間にチャンスはいくらでもあります」。
    この接客を成功させるコツは、レジをその都度閉め、お客様にとって「失敗してもいいから一度買ってみよう」と思える3,000円を超えないこと。

顧客台帳の仕組みについて。

  • 3,000人のお客様について全て顏写真を貼り付ける。来店時に髪型を変えたこともわかるし、DMを書くときも目から入ってくる情報でいろんな記憶が甦る。
  • ペットの名前も必ず書く。「少子多犬化」の時代、「○○ちゃん元気?」でお客様との距離は縮まるし、ペットの名前が宛名に入ったDMをすぐ捨てる人はいない
  • カラーシールで属性を分ける。ピンク=気難しい人、グリーン=物忘れのひどい人、オレンジ=アイメイク商品は絶対に買わない人。
  • 4色ボールペンで属性を分ける。グリーン=午前中に買い物に来る人。ブルー=午後に来店する人。黒=配達をさせていただく人。パターンが変わったらご家族が病気になったなど家庭事情に変化があったかも知れない。フォローする。赤=売り出しDMのときだけ買う人。DMを確実に届け、反応がなかったら失礼にならないよう近況をおうかがいする。

バザールの仕組み。

  • バザールで来店いただいたそのときに3ヵ月後のバザールの予約をとっておこうと思ったのです」。バザールは予約の商売であり徹底的に準備をする。「戦う前の日に100%の準備が終わっていることが必要です」。
  • また、バザールを発案したことで、成功のために何をするかを考えたとき、顧客台帳の強化(ペットの名前、カラーシール、4色ボールペン…)、年間2万通のDM葉書への注力などが派生的に生まれた。

DMについて。

  • お礼のDMで「いかがですか?」「気にいっていただけましたか?」など商品の感想を尋ねることは絶対しない。「渋谷西武のミキハウスの店長が、綾ちゃんのセーターはきっと似合っているんでしょうね、と手紙をくれたときの私自身の気持ちを思い出してみると、やっぱりそうなんですね」。
  • DMには「あなたにもう一度会いたいわ」など相手がドキッとする一言を書く。

リピーターを育てることについて。

  • リピートとひと口に言うが、2度目の来店はそれほど難しいことではない。難しいのは3度目。そのお客様の1度目と2度目の買い物を見て興味のあるものをDMで案内する。また、サンプル品を見せ「(入荷は)来月ですから」など次に来るプロミス(約束)を得る。「化粧くずれ対策をしてくださいね」など宿題を出し、ちゃんとできてる? 相談に来てくださいね、とフォローDMを出す方法もある。

最後に、一番響いたところを丸々引用しておく(電車内で読んでいて涙が出た)。


地方新聞で知った情報や、お店のお客様からの情報で年間50回ぐらいの葬儀に参加します。
私が行った方がいいときもありますが、夫(社長)が参列することも多いです。
お客様との関係や、葬式の大小にもよりますが、これはお客様への気遣いでもあります。
親が死んで、化粧品店が香典を持って焼香に来たというと、いったいこの嫁はいくらほど化粧品を買い込んでいるんだと思われて、かえって辛い思いをさせてしまうこともあるからです。
安達太陽堂のVIPのお客様で年間50万~60万円ほど購入してくださっているお客様がいました。
このお客様が、交通事故で亡くなりました。
そのときは、私も本当に悲しかったけど葬式には出席しませんでした。
そのお客様はご主人が病気で入退院を繰り返されていました。周囲の方から、せめて自分が明るく振る舞うことでご主人を励まし家族が暗くならないように努めているという話を聞いていたので、私も応援していたのです。お化粧をされるのも、そのためだと思っていました。
ところが、闘病中のご主人ではなくて、ご主人を支えていたそのお客様が不慮の事故で亡くなられたのです。
お客様ご本人が亡くなられたので、参列させていただいて当然なのですが、参列しませんでした。
自分が入院して苦しんでいる間、嫁が化粧品を買い込んでいると知ったら、浮気でもしようとしていたのかとご主人が誤解されて、ご主人にとっても亡くなられたお客様にとってもこれほど不幸なことはないと思ったからです。
葬儀の日、心の中で手を合わせてお別れを言いました。気遣いを怠ったらかえって逆効果になることを忘れてはいけないと思います。

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「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」(ケヴィン・ケリー)を読んで

Posted on 2016年10月26日. Filed under: Activism, book | タグ: |

昨夜、WebSig24/7の「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則(ケヴィン・ケリー)」の読書会(耳折会)その2に参加して考えたこと、ざっとまとめ。

  • おっと、またよくある罠に陥るところだった(…と気づいた)。この本はパラダイムを示したものではなく、「不可避な流れ」を示したものだ(われわれが向かう先はディストピアでもユートピアでもなく「プロトピア」だ、と最初の章にもある通り)というところには納得できていたものの、その不可避な流れは世界のどこででも同じように起こるものなんだと、また鵜呑みにするところだった。
  • 今回の読書会を通じて落ちてきたのは、直前に自分がこの本をやや批判的な視点でざっと再読したことと、W田さんの炭火の遠赤外線パワーのようなしつこい「日本ではどうなの?」という問いによって、そんなに簡単に実現するものじゃないんじゃね? そこを考察することが面白いじゃね? って切り口だった。
  • (自分のメモから拾うと)「なっていく」ものと「しがみついてしまう」ものとの相克はきっと起こる。その結果、きっと「なっていく」んだろう。日本でもアフリカでも。そこをちゃんと見ていきたい。
  • 本の民」と「スクリーンの民」の話。かつては「話し言葉」によって成り立っていた文明が活版の普及によって「書き言葉」主体となった。書き言葉は本というチャンク(塊)で流通した。それが現在、急速にスクリーンに取って代わられつつある。これは退廃ではなく適応だと考えるべきだろう。この本の中にもスクリーンの普及で人間が読む量は3倍になった、という指摘があったりするし。
  • 考えを少し進めてみた。スクリーン時代に人の思考はどうなるか。たとえば世界史には一国の通史と同時代史がある。学校で主に教えられるのは一国史だが、それは紙の本のリニア性とも関連するのでは? ハイパーリンクで行き来が容易になれば歴史認識は縦でなく横に広がりやすいものになるだろう。またたとえば、ある哲学者の思想を彼が書いた「本(固定化した塊)」で学ぶとき、1人の特異性にばかり目がいくが、アンバンドルされたページを行き来しながら関連思想や出来事と共に学べば、彼と他者、環境との関わりの方により目が行くようになり、特異性よりは時代精神の方への理解が深まるという風な変化も起こるのではないか。
  • 紙の本には終わり(読了)があり、人はそこから考えはじめる。しかしスクリーンには終わりがない。この不可避の流れは人の考え方にも影響を及ぼす。一つよい点を挙げれば、狭い視点での深掘りよりつながりに目が行き、たとえば現代人が肌感覚として捉えることができない気候変動のような大きな相互作用の仕組みへの理解に近づけるのでは、など?
  • 「コグニファイング」の章。有り余る計算パワーは何に使われていく(べき)か、というB西さんの指摘にハッとした。計算能力はもっと無駄づかいされるべき、されていくだろうというもの。エンターテイメント方面とか。これは自分の中にあった疑問と化学反応を起こした。データジャーナリズム的なやり方やインフォグラフィックのような表現はなぜ日本で普及しないのか? とここ数年考えていた。理由は英語圏で行われているような「ファクトによって説得していく」という考えそのものが、日本人にとっては“面白くない”ものだからではないか。
  • Change.orgのような生硬なアクティビズムに、日本人がなぜ拒否感を持つか。民主主義が根付いていないからか? いや“気恥ずかしい”うえに“ちっとも面白くない”からではないか。
  • なぜ人は選挙には行かないのに選挙特番を見るのか? “面白い”からだ。ならば(たとえば)日本で投票率を上げるためには、もっと選挙を“ネタ化”したらどうか? データサイエンティストはがんばってほしい──ではなく、データで何ができるかをわかった上で面白いコンテンツを繰り出せる奴らを総動員すべきだ。

脱線してしまったところで、一旦終わり。

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