『フィーバー・ルーム』(アピチャッポン・ウィーラセタクン):感想+謎解き

Posted on 2019年7月4日. Filed under: 映画, 演劇 |

2019年7月2日(火)、『フィーバー・ルーム』を観た。
パルムドール受賞の映画監督であるアピチャッポン・ウィーラセタクンがつくった“パフォーマンス作品”。

"FEVER ROOM"

前半は“映画”に必要とされる骨格を折ったような、わざと誤った経路で伝えるような、奇妙かつ耽美的な映像作品。

そして後半の仕掛けが圧巻。観客にレーザー(だと思ったが、パンフレットでは強力なビデオだと解説されている)が降り注ぐ。たとえば地球の気象現象の全てを自分の身体で知覚できたとしたらこうだろうか──というような、自分の幽体が遍在するような強いイマーシブ体験だった。

この構成と内容で唯一無二だし、もし同一フォーマットで次をやるなら陳腐になるだろうと感じた。

どう表現しても観ていない人には伝わらないという諦めがあるのだが、(なぜか)上映後に配られたパンフレットに沢山のキーフレーズが載っていたので熟読した。以下、なるほどと思った部分を拾ってみる。

"FEVER ROOM"

見開き

「映画作家/美術家が初めて取り組んだ舞台作品。」
「記憶とイメージのうつろいやすさに関する省察へと観客を誘う上映=パフォーマンス。」
「映画と演劇の枠組みを超えた、夢の中へと亡命するかのような新しい劇場体験を提供する。」

『フィーバー・ルーム』について アピチャッポン・ウィーラセタクン

  • 数年前にいくつかの洞窟を探索し、その体験は長く自分に深い影響を与えた。
  • タイ北部・東北部にはいくつかの洞窟があり、第二次世界大戦中に大日本帝国に抵抗するタイの地下組織が使ったものもある。先史時代(紀元前9,000年~)の遺物で埋めつくされた洞窟、『プンミおじさんの森』の撮影で使った洞窟では人類以前の存在の「痕跡が造り出され」た(セットとして、という意味? 実際にあったという意味?)。
  • 映画館は現代の洞窟であるという印象を持っている

「近い将来、光は不足しており、光の夢は貴重品となっています。ある兵士がある主婦の夢に干渉し、彼女の光を吸い上げてエネルギーとして利用しようとします。しかし彼は彼女の記憶の中、打ち捨てられた劇場の中に囚われてしまいます。彼は彼女の眠りを引き延ばそうとします。彼女が目を開けば、ふたりとも消滅してしまうからです。」

部屋(ルーム)に入る クライウット・ジュンポンサトーン(映画研究者)

  • ウィーラセタクンの作品の感覚をうまく言葉にできないのは、彼の映画の視界/領域(スコープ)に制約がないから
  • 伝統的な映画体験の死をめぐる概念。映画は他のプラットフォームに「移転(リロケーション)」しており、特に美術館やギャラリーは新たな拠点となっている
  • 彼の作品が映画館を迂回してパフォーマンスの世界に入ってゆくほど、映画的媒体のアイデンティティーの核心に接近してゆくという逆説
  • 眠り=夢=映画という関係性は、タイの独裁的体制への抵抗の象徴として出現した。『フィーバー・ルーム』のタイ語タイトルは『光のない都市』を意味する

インタビュー(佐々木敦さん)

  • 『フィーバー・ルーム』は映画。あまりはっきりカテゴライズしたくないが、あえて言うならライブシネマ。
  • 実はあれはレーザーではなく、ヴィデオ。すごく強力なヴィデオプロジェクターを使って光を出している。
  • 上映は日本で6ヵ国目だが、作品を観て泣いた人がいたのは日本が初めて。他の国では全く見られなかった。
  • 自分の作品はセックスで得られるような快感(パーソナル)で、ハリウッド映画はポルノ(パブリック)だという違いだと思う。

「私の考えでは、映画に興味を持っている人は、夢にも興味を持っています。体には夢を見たいという欲求が常にあると思うんです。私の作品は個人的だとお話ししましたが、ひとりひとりそれぞれに個人的なストーリーがあるわけです。夢となると、もっと個人的になります。だからひとりひとりが見る夢は、さらに個人的なものなのです。それはとても深いものです。だから自ずからその夢が私の中ではモチーフになってくる。映画と夢はつながっているのです。」

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