映画「何者」を観て、小説「何者」を読んだ

Posted on 2016年12月9日. Filed under: 読書, 映画 |

おそらく今日(2016年12月9日)でロードショー公開が終わった映画「何者」を駆け込みで観て、

何者 – 映画・映像|東宝WEB SITE
何者

そしてすぐに小説を読んでみた。

何者(朝井 リョウ):Amazon

ネット上で感想の断片に触れたりして記憶に引っかかっていた。で、意外な面白さに驚き、ある点(後述)について確かめたくてすぐに小説も読んだ。
以下、そのざっくりまとめ。

「何者」とはどういう意味か

物語は、さまざまな考えを呑みこんで就職活動を戦い、内定を得ることで社会に認められよう、つまり「何者」かになろうとあがく若者5人を描いている(実はこのタイトルに込められたもう一つの含意は終盤に明かされるのだが)。いわば就活ドラマだ。

しかしこの映画はネット時代の我々は「何者」かと問いかけていないか?

この映画では小道具としてTwitterが非常にうまく使われている。原作の小説もそうなのだが、小説は物事をリニアにしか提示できないが、映画では人物の行動とTweet(つぶやき)がオーバーラップするシーンが度々ある。その内容がちぐはぐであればあるほど、今や当たり前になった「日常生活についてちょくちょくネットでつぶやく」行為に対する異化効果が(小説以上に強く)生じていると思う。

楽しい飲み会の中にいて、スマホでTwitterをやっているお前は「何者」だ?
エアリプを飛ばし合うお前と相手は、誰に向かって「何者」として振る舞っている?
裏アカで暗い本音を吐き出すお前は「何者」だ? 現実のお前と統合されているのか?

…といった問いかけが行われているような気がした。

人は何かを吐き出し、他者と相互作用することで自己を形作っていく。テクノロジーの進歩は人がアウトプットする「場」「形・長さ」「頻度」を変えてきた(例:Twitterばかりやっていると長文が書けなくなる≒まとまった長考をしづらくなる)。

空想、妄想、公言しづらい暗い想念などは昔の人も持っていたものだろう。が、それをネットで吐き出せるようになった。それによって即座に人とつながれるようになり強化してきた現代人の「自己像(何者であるか)」は、それ以前とはだいぶ様変わりしてきたはずだ。

映画の中で、主人公たちのフラグメント化した自己が交錯していく様子を見ながら、これは若者の就職活動(だけ)を描いたものではない作品になっているなと感じられた。

少なくともぼくはそう感じたのだが、次に、原作の小説からしてそこまでを意図して書かれたものなのか、それともこの映画の監督が広げたのか、映画のイマジネーショナルな表現から自分がそれを掬い取っただけのかを知りたくて、すぐに小説を読んでみた(A)。

メタミステリー/叙述トリックを描く演出に驚き

少し脱線。「何者」は叙述トリックの側面がある作品だ。
主人公のモノローグが多くを占めている小説版でなく、内面を抑制して描きつつ進んでいく映画版の方が、“それ”が判明したときの驚きが強い。それだけでなく、その暴き方は主人公が取り組んでいた演劇をモチーフにした演出になっている。非常にドラマチックで映画版の独壇場であり、圧巻だった(映画好きはここだけでも観る価値があるんじゃないかなぁ)。

三浦大輔という監督はなぜこういう引き出しを持っているんだろう、と調べてみた。

三浦大輔 (作家) – Wikipedia

なるほど、自ら「ポツドール」という劇団を主宰している、つまり演劇に深い造詣を持っている人なのか。納得できた気がする。

映画版のよさと小説のよさ

疑問(A)を確かめるため、映画を観た後で小説を一気に読んでみた。
登場人物たちの性格造形や心の機微がより細やかに書かれているなど、小説ならではの点がある。そして小説版から感じ取れたのは、瑞月の

「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」

といった熱量の高い言葉に象徴されるように、理不尽な状況に打ちのめされながら、何者かになろうと戦う若者たちの物語として読まれるべきだろう、ということだ。

とりあえずここまで。

(ここまではネット上のレビューなどは一切見ずに書いた。後で見てみる予定。)

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