友人Hが死んだ話

Posted on 2014年11月18日. Filed under: murmur |

(友達を大切にしない馬鹿な男の話です。読まなくていいですよ。)

中学の頃からの古い友達が死んだ。

10月に入ってすぐだったが、ぼくが知ったのは10日以上経ってからだった。

東京で暮らすようになってから(いつからだよ…)生家がある横浜の友達とは自然に疎遠になった。
お前の引っ越し先がわからなくてようやく連絡できたよ、と必死に探して電話をかけてきてくれたOは言った。

HとO、そしてぼくは中学の水泳部仲間で、卒業後も時々会っていた。が、ぼくだけここ15年くらい関係が切れていたと思う。

呆然として電話を切り、Hのことを思い浮かべた。一旦思い出しはじめると、いろんな記憶が芋づる式に甦りはじめる。

中学の頃チビだったHだが、高校に入る頃にはぼくとほぼ同じ体格になった。

大学に入ってからの互いの近況報告では、Hは自動車部に入ったと言った。楽しそうだねとぼくがからかうと、バリバリの体育会で練習がとてもキツい、と答えた。

社会人になりたての頃、トライアスロンに出ようと話し合い、2人でロードレーサーで静岡まで遠乗り練習などをやった。

ぼくがレゲエを聴くようになったのはHの影響が大きい。CDやレコードを買い漁るだけでなく、2人でクラブやイベントに通った。本牧、関内、ときどき東京のクラブまで遠征し巨大なスピーカーの前で夜明けまで踊り、牛丼を食べて朝帰りするのが定番だった。

夏のレゲエの屋外イベントにもHとよく行った(一時期はほぼ皆勤だった)。あるイベントで、ぼくが前の方で(ぼくの目から見て)おかしな踊りをしている男を指さして笑った。するとHが「踊りというのは、自分が気持ちいいように好きにやればいいんだ。人の踊りを笑っちゃダメだ」と言った。穏やかなHが発したこの言葉は、ぼくにショックを与えた。今でも自分が不寛容な考えに捕らわれたときなど、釘を差すかのようにこの言葉が浮かんでくることがある。

夜、ランニングしながら、Hとのさまざまな思い出を反芻した。すると“うわあっ!”と叫びたくなるような後悔と恥ずかしさがこみ上げてきた。Hはぼくの「親友」といっていい存在だったんじゃないのか?
本当の後悔とはこれほどヘビーなのかと驚くほど、その感情の塊は重かった。

数日後の休日、Oと待ち合わせ、横浜にあるHの自宅マンションを訪ねた。段ボール箱のアルバムにあったHの写真10数枚と、奥さんと二人の娘さんに話したい思い出話を携えて。

土曜日は、急逝した友人Hの四十九日法要だった。

約一ヵ月後、11月中旬の土曜日はHの四十九日法要だった。

空はみごとな冬晴れ。また、辻堂の大規模な霊園は日本の寺社にあるような陰影をほとんど感じさせない機能的なつくりだったこともあり、納骨まではあっけらかんとした感じで進んだ。

が、横浜に場所を移しての食事会になると、場の雰囲気は軽く重くを繰り返した。

ぼくがついたテーブルはHの中学・高校時代の友達の席だった。酒が進んだころ、一人が「なぜあいつなのか、なぜこんなに早いのか未だに納得できないんだ」と絞り出すようにつぶやいた。そのあたりから、話はより重く沈んでいった。

こんなことを考えた。
人は自分の意思でどこへでも行けるという意味では個人だが、実はネットワークの一部だ。よく生きるほど、ネットワークの中で代えがたい一部になる。たとえばAさんとBさんは、双方が伸ばした線でつながっている。線は両者どちらのものでもなく共同所有だ。
Aさんが突然世を去ると、この共同所有の線ごと消えてしまう。Bさんが体験するのは、個人としてのAさんが消えることだけでなく「Aさんとつながっていた自分の一部」を失った驚き・痛みなのだ。これが人を失った悲しみというものだ。

Hの遺影を見て、もう一度だけ会いたいと思った。純粋な寂しさからそう思ったのはもちろんだが、嫉妬の感情もあった。お前はどうしてこんなに人から愛されたんだ、その答えを見せてほしい、という思いだった。

食事会の後、同じテーブルにいた5人で飲みに行き、23時ごろまで静かに飲んだ。

帰りの電車内でスマホのメーラーを立ち上げ、まとまらない考えを打った。酔って出すメールやSNS投稿は大抵後で後悔することになるから、自分だけにしておけよ、と自分に命じながら。

タクシーに乗る頃、さっきまで一緒にいたOからメールが届いた。反射的にこんな返信を打ってしまった。
「上の娘は今9歳、下の娘は5歳だったっけ。彼女たちが20歳になるまで、俺は毎年クリスマスプレゼントを贈ろうと思ってるんだけど、俺一人だと気持ち悪いと思われそうだし、忘れるかもしれないから一緒にやらないか?」

メールを送信してしまってからあーあ、と思った。

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