「情熱商人 ドン・キホーテ創業者の革命的小売経営論(安田隆夫)」読書メモ(Key: 見落とし感, 主語転換, 深掘り展開, 社員を個人商店主に)

Posted on 2014年3月16日. Filed under: 未分類 | タグ: , , |

「情熱商人 ドン・キホーテ創業者の革命的小売経営論」(安田隆夫, 月泉博)、読了。

ドン・キホーテ創業者の安田隆夫さんの本だ。

ドンキという店について不思議に思っていたのは“深夜についつい店内を徘徊したくなってしまうこと。そしてつい要らないものを買ってしまうこと”だった。
ゴチャゴチャした商品陳列や饒舌なPOPが特徴的な同店だが、この本を読んでインスピレーションの源泉や、安田氏が強い意志の下で来店客の観察とさまざまな試みを反復しながら今のスタイルに到達したのだとわかった。また「MEGAドン・キホーテ」という店舗形態についてもドンキの大型版だろう…ぐらいに考えていたのだが、もっと狙いは深遠らしく、いろいろ面白い本だった。

以下、メモ&引用。

  • 「泥棒市場(ドン・キホーテ創業者である安田隆夫氏が最初に立ち上げた小売りの店)には売ろうという気迫があふれていた」。泥棒市場での客の潜在的な嗜好を必死で探り、絞り出した策が「ナイトマーケットの発見と深夜営業」「圧縮陳列」「手書きPOPの洪水」という、今のドン・キホーテにつながる3大手法だった
  • 深夜営業について。静かな住宅街に煌々と灯る泥棒市場の看板照明の下で、安田氏は一人ゴソゴソと検品や品出し作業をしていた。すると道行く人から「何をしてるんですか?」「店はまだやっているんですか?」という声がかかる。1円でも売上が欲しかったので「やってますよ」と。深夜の来店客は、多くがアルコールが入っているせいか、ゴミの山のような商品でも逆に面白がってよく買っていった
  • 人の心理は非合理で不可解なことが多い。特に買い物は自由度の高い行動だからその傾向が強まる。さらに夜間ともなれば少し背徳的で猥雑な要素が入り込む。だからそれに応えるサプライズやエンターテイメントが必要だ
  • ドン・キホーテのコンセプトは「CV+D+A」。CV(コンビニエンス)、D(ディスカウント)、そしてA(アミューズメント)である
  • 「今繁盛している店には、(たとえそれが生活利便ニーズ対応の業態であっても)いずれも売り場にエンターテイメントな〝お祭り〟の要素が色濃い。たとえば、ホームセンターの「ハンズマン」(本社・宮崎県都城市)、食品スーパーの「ハローデイ」(同・福岡県北九州市)、そしてわがドン・キホーテである」
  • 来店客に手の内を全部見せるな。常に“見落とし感”が残るように演出し、後ろ髪を引かれながら店を出る気持ちを与え、近いうちにもう一度来たいと思わせなければならない。そのさじ加減が難しいのだ
  • 客との関係では主語を転換して考えよ。そして競合店との立場においても、相手を主語として「これをされたらかなわない」ということを徹底的に突き詰める。主語を転換すれば、アイディア(戦略)の精度やその後の具体的施策(戦術)の精度は飛躍的に高まる
  • ドンキのMD(マーチャンダイジング)は一見経済合理性のない品揃えを平気で行う。たとえばつけまつげやカラーコンタクトなど需要が限られる商品をバリエーション豊富に深掘り展開。アパレル部門では売上の3割をコスプレ衣料が占める。通常のDSは流行に左右されない型落ちモノなどを安売りするが、ドンキは流行品に対する過敏さ・執着心が異常に強い。MD的に先鋭的になればなるほどその輝きを増すという独自構造がある
  • 日本は超成熟消費社会であり欧米型ハード(プア)DS業態の成立余地は大きくなかったが、2008年秋のリーマンショック以降は“真正プアDS市場”がかなり拡大。ドンキでもMEGAドン・キホーテ(長崎屋を買収した店舗が主体)で食品売り場を主体にこのプアDS市場を取り込む。しかしこの業態でも、プアDSの対極にあるドンキ流“コト、ココロ志向”のディスカウント要素の注入が差異化と競合優位の決め手になるだろう
  • 株式店頭公開(1996年)の翌年に出店した新宿店(第8号店)は大ブレイクし、事業全体にも大きな意味をもたらした。この店の成功は郊外ロードサイドだけでなく都心をドンキの得意立地に変えた。また都心店舗での先鋭的イメージ発信で、郊外店の売上も共振・成長し、都心と郊外の二本立て出店がその後基本戦略に。また新宿店は「立地創造」も。新宿の職安通り一帯は夜の女性一人歩きがはばかられるような裏通り的街区だった。が、ドンキ新宿店が核となって周りに飲食店・物販店が集積され、夜も賑わう商業街区へと徐々に変貌していった
  • 会社が大きくなればなるほど、あえて組織を細分化し“小さな燃える集団”にリメイクし続ける努力を惜しまない
  • 小売業にとって営業の現場は最も神聖で重要な場であり、そこで働く人たちは大いに敬意を表されるべき。しかし現実に日本の小売業従業員はお客様や世間からのリスペクトされにくい。だからこそ経営者が真摯に現場をリスペクトし、盛り立てる必要がある。ドン・キホーテは(…)流通業界きっての属人的企業である。私はそれを、大いに誇るべきことだと思っている
  • 現場に大きな権限を与えるドンキだが、各店がバラバラにならない理由のひとつが「中小ラックジョバー型問屋」のフル活用。現在約1000社の取引先のうち2割を占める。ラックジョバーは、ヘアケア、珍味など専門性の高い商品・すき間商材などを主に扱い、売り場づくりなどにも独自のノウハウを提供する中小専門問屋。「圧縮陳列」などの売り場づくりも彼らとの協業があって維持できている
  • 商品部対現場。現場は商品部からの「送り込み」に不満を漏らす。しかし送り込みがなければ今のドンキの店舗は回らない。このトレードオフを解消する方策は「ない」。「止揚(しよう)」とまではいかないが、現場と商品部の前向きなせめぎ合いの下で独自の品揃えを成立させるのが今のドンキ最大のノウハウ。論理的に突き詰めれば間違っているが、実態は正解という世界。その構造はあえてファジーなままでいい
  • これからの時代にフィットする流通企業は「常に変化対応できる柔軟性を第一義とし、あまり売上的なものに拘泥せず、あらゆる意味で質的精度を高めながら持続が可能な有機的組織体」だ。ドンキはすでに基本戦略の軸足を規模拡大主義から業態創造主義へと移した。 仮に売上が1兆円になったとしても、マインドはあくまでも「中小企業」だ
  • 事業では沢山の小さな失敗と、数少ない大きな成功があり、大勝ちによるプラスが小さな負けでの累積マイナスを上回ればいい。ところが人は「負け」には敏感だが「勝ち」には意外なくらい鈍感だ。商売で50万円損をすれば悔しがり、必死でその負けを取り戻そうとするだろう。 しかし100万円儲けるチャンスで50万円売り上がったことを「50万円も儲け損なった」と悔しがる人は極めて少ない。これはダメで、果実を全て収獲できなかったことを地団駄踏んで悔しがれる人こそ本当の勝負師なのだ

最後に、ドン・キホーテの東日本大震災に対する支援事業を紹介した一節を引用しておく。

「当社独自の震災復興支援事業として、2011年6月、被災地域復興応援のフラッグシップショップ、ドイト恋ヶ窪店(東京・国分寺市)をオープンさせた。
同店の“元”は、ドイト仙台若林店である。仙台若林店はリニューアルオープンのわずか1週間後に被災し、その被害は甚大で建築資材の確保もままならない中、復旧できずにしばらく閉鎖せざるを得ない状況となった。
それならば、いっそ丸ごと店舗を首都圏に移転させ、東北のパートナー(取引先)の事業継続支援と復興に向けた取引の拡大、および被災地域の従業員の雇用支援と就労機会の提供を図ろう、ということで立ち上げられたのがドイト恋ヶ窪店である。実際、同店では10名近い仙台若林店出身の社員が働き、約40社の地元(東北)パートナーが商品を納入することになった。
あえて同店を東京に持ってきたもう一つの理由は、「消費で東北の復興を応援したい」という、首都圏のお客さまの温かい声援に応えることだ。
それに向け同店では、パートナーの被災倉庫や、仙台若林店の被災商品を格安で販売したほか、被災地域や原発事故の風評被害を受けている地域の産直品などを集めた「大東北市」などを催し、大きな話題と人気を集めた」

本書で安田氏は、「CSR」は偽善的な響きがあり、そういう取り組みは(あまり)好きではない述べている。
しかし東日本震災が起こり、東北の自社店舗の従業員による自発的な地域住民に対する働きを見て少し考えを改めた…といった記述もあり、興味深かった。

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