メモ:「ストーリーとしての競争戦略」(Key:非合理なキラーパス、ポジショニング(SP)と組織特殊性(OC)、ダラダラ会議、ストーリーの面白さが組織を駆動)

Posted on 2014年3月11日. Filed under: 未分類 | タグ: , |

ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件」(楠木 建)、読了。

博識で強い表現欲をもった経営学者の、すっ…ごく長い雑談という印象。

紙の本だと518ページあるらしい。Kindle版を移動時間などにコツコツ読み進めたが、%表示がなかなか進まないので驚いた。

ストーリーテリングの本を物色しているときに目に留まり、以前話題になったことを覚えていたので興味を持った。最初“ストーリーテリング×企業の戦略”の本かと思い、Amazonのレビューをいくつか読んでみるとそういう内容ではないとわかった。が、興味が湧いたので読んでみた。

主旨をかいつまんで説明するとこうだ。

優れた企業戦略というのはストーリーである(べき)。戦略とは文脈に依存する特殊解で、普遍的なものではない。静止画のようないわゆるベストプラクティスでもない。
ストーリーであるのは起承転結であるからで、「転」にあたる部分はその部分だけを取り出せば不合理だから、他者が見れば不可解であり、そこが模倣への防壁となっている。

この本では戦略の優位性の取り方を説明する部分で

  • SP(Strategic Positioning:よくいわれるポジショニング)
  • OC(Organizational Capabilitiy)

という二つの概念が出てくる。

SPとOCの対比でいえば、経営書として熱狂的な支持を受けた(ぼく自身もハマった)「ビジョナリー・カンパニー2」の主張は、一貫してOCの立場なのだろう(…と思うが後で読み返してみたい)。読んだ人は、あの本の“カリスマ経営者なんか要らん”“まず誰をバスに乗せるのかを決めろ”“ひたすら弾み車の回転を高めよ”といった内容を思い出すとわかると思う。

以下、引用(読み返し用)。

「さまざまな経営資源の中で、「組織特殊性」(firm-specificity)の条件を満たすものを、一般の経営資源と区別してOCといいます。組織特殊性とは、平たくいえば「他者が簡単にはまねできず(まねしようと思っても大きなコストがかかる)、市場でも容易には買えない」ということです。SPがトレードオフを強調するのに対して、OCのカギは「模倣の難しさ」にあります

「他社がそう簡単にはまねできない経営資源とは何でしょうか。組織に定着している「ルーティン」だというのが結論です。ルーティンとは、あっさりいえば「物事のやり方」(ways of doing things)です。さまざまな日常業務の背景にある、その会社に固有の「やり方」がOCの正体であることが多いのです

「競争優位はSPとOCの組合せなのですが、業界が成熟するにつれてOCの占める部分が大きくなっていくのが一般的です」

「数多くのM&Aで成長している日本電産は、ゴーンさんが日産でやったことを永守重信総料理長が何回も繰り返しているようなものです。日本電産はその時点では必ずしも業績が良くない企業を買収します(なぜならば、もともとピカピカの企業であれば高くつく)。ただし、それは往々にして図の右下、つまりかなり良い厨房にあるのに、レシピがはっきりしないため低迷している企業です。左下の企業ではありません。「技術も人材もあるが、経営の問題で業績不振に陥っている企業は立て直しやすい」というのが永守さんの考え方です。そうした被買収企業に永守料理長が独自のはっきりしたレシピを導入していくことによって、急速に業績を好転させ、グループ全体の増収増益につなげています。SPとOCのうまい組合せを意識した戦略です

「トヨタがスピーディーに製品を開発できる一つの理由は、その初期段階から、部品間のかみ合わせの良さやつくりやすさを織り込みながら個々の部品が開発・設計されていることにあります。つまりできるだけ前工程で調整の質と量を増やすことが重要で、これを「フロントローディング」(前倒し)といいます。フロントローディングを進めるためには三次元CADのようなITツールが有効な面があります」

「ニッチの戦略は多くの会社でしばしば議論に上ります。しかし、多くの場合は「ニッチに特化する」といった次の瞬間に、「年間二〇%成長をめざす」というように、筋が通らないというか、論理がねじれた話になりがちです。本当にニッチに焦点を定めて無競争による利益を追求するのであれば、成長はめざしてはいけないことだからです。(…)ストーリーの最後にくるシュートは、あくまでも「なぜ儲かるのか」という論理にこだわるものでなくてはなりません。最後のところでの利益創出の論理が甘くなると、ストーリー全体が台無しになってしまいます

「アルバックは真空技術を使って、液晶や太陽電池などの先端分野の製造装置を開発し製造する企業です。生産性向上のためには会議の数を減らし、時間を短くしたほうがよいというのが常識ですが、アルバックは数多くの会議を、しかも時間をかけて「ダラダラやる」ことにこだわっています。独自の技術開発に事業の軸足を置いてきただけに、かつてのアルバックは技術者が自由闊達に最先端の技術を追求する会社で、技術者一人ひとりがカスタマイズした製品を取引先の要望に応じてつくり込むというやり方がとられていました。しかし、薄型テレビや太陽電池など巨額投資が必要なハイテク業界では、汎用的な製品に戦略的に投資をして、同じ装置を大量に売ることが大切になります。 その一方で、用途市場の変化が激しく、基盤となる技術にしても不確実性が高いので、どの領域に集中するかはトップダウンでは決められません。そこでアルバックは技術者の行き過ぎた個人主義を抑制し、現場の技術者全員を巻き込んだ徹底した議論を通じて合意形成をするために、「ダラダラ会議」を頻繁に開くというスタイルを意識的にとっています

「全員に愛される必要はない。この覚悟がコンセプトを考えるうえでの大原則です。誰に嫌われるべきかをはっきりさせると、その時点で確実に一部の顧客を失うことになります。しかし、全員に愛されなくてもかまわないということ、これが実はビジネスの特権なのです

「サウスウエストの「空飛ぶバス」にしてもスターバックスの「第三の場所」にしても、肯定的な形容詞はどこにも見当たりません。だからこそ、面白いストーリーの発火点となったのです。コンセプトはできるだけ価値中立的な言葉で表現するべきです

「中古本を売ったり買ったりする仕事は、ブックオフのずっと以前から存在していました。業界は淡々と同じことを何十年もやり続けていました。ブックオフの創業前後に大きな環境変化があり、何か新しい外在的な事業機会が生まれたわけではありません。もしブックオフの戦略ストーリーが、それまでの人々、古書店業界の知識を持った人々にとって「良いこと」ばかりで綴られていたとしたら、ブックオフが創業するずっと以前の一九六〇年代か七〇年代にブックオフと同じような企業が登場していても全く不思議はありません。ブックオフの戦略ストーリーが「新しく」「独自」だったのは、それが従来から共有され信じられてきた基準からして、明らかに「一見して非合理」なキラーパスを含んでいたからなのです」

「戦略ストーリーが意図するのは、一目瞭然の派手な差別化ではなく、「似て非なるもの」という差別化

「戦略に関しては、絶対の保証はありえません。その戦略ストーリーがうまくいくかどうか、本当のところはやってみなければわかりません。しかし、論理的な確信を持つことはできます。それは「これだけ情熱を持ってやっているのだから、必ず道は開ける」という情緒的な思い込みではありません。「どうせやってみなければわからないから、一か八かの勝負だ」という冒険でもありません。ストーリーが太く強く長い論理でつながっている、だから長期利益に向かって動いていくはずだ、という論理に基づく確信です。 自らのストーリーに対する論理的な確信を得るためには、構成要素のつながりの背後にある「なぜ」を突き詰めていくしかありません。何をやるか、いつやるか、どのようにやるか、戦略はさまざまな問いに答えなければなりませんが、何よりも大切な問いは「なぜ」です

ストーリーの面白さは、組織における戦略の実行と深くかかわっています。(…)全員がストーリーを共有しているということが戦略の駆動力になっています。言葉はちょっと悪いのですが、一つのストーリーをともに担っているという「共犯意識」が大切なのです

「ただでさえ忙しい中で、リーダーはどうしたらストーリーを伝えるための努力を続けられるでしょうか。自分で面白いと思えるストーリーをつくることに尽きるというのが私の意見です」

納得できる箇所も多数あったがツッコミを入れたいところもそこそこあり、最終的に著者の見解に全面賛成はできなかった。

が、経営書を読む時間を持つメリットは、著者との「脳内対話」に大きな意義があると思う。言葉を交わす中で、主張が合わなくても重要な示唆を与えてくれる人がいるように、この本はいくつかの強い刺激を与えてくれた。頭の切れる人と長い床屋談義をしたような感じがする。

Make a Comment

感想やアドバイスがあれば、お気軽にどうぞ

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

Liked it here?
Why not try sites on the blogroll...

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。