吉田口登山道を麓から歩いて富士山に登る

Posted on 2011年9月13日. Filed under: volunteer | タグ: , , , , , , |

2011年9月7日・8日、富士山に一合目から登ってきた。

5月から毎週東北被災地行きのボランティアバスに乗っているので、今年は山に全然行ってない(山だけでなく他の多くの趣味も“箱庭”っぽい感じがして、離れてしまっている)。が、TwitterやFacebookなどで「富士山行った」というポストをいくつか見かけ、ウズウズしてきた。

ぼくはこれまで富士山に4回登った。なので去年から、次に登るなら何か新しいチャレンジを…と考えていた(去年富士宮口から登った際も「山頂の山小屋に泊まる」をやってみた)。
今回は「一合目からの富士山」への挑戦を含め、“新しいこと”を2つやると決めた。

  • 吉田口登山道の起点、富士吉田の北口本宮冨士浅間神社から登る。帰りも浅間神社まで戻る
  • ご来光はポピュラーな久須志神社前や大日岳ではなく、夜明け前に剣ヶ峰に行き、文字通り日本最高地点から見る

以下、写真とメモ。

新宿駅バスターミナルから20時過ぎのバスで富士吉田へ向かう。

新宿バスターミナル, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

22時過ぎ、富士山駅(旧富士吉田駅)で降りた。
東京と違って涼しい。富士山の火山岩のような独特の匂いがある。ホテルまではゆるやかな登り坂。あ、もう富士山の懐にいるんだ、と少し胸が踊る。

富士吉田の市街は気圧が低く、プリングルスの蓋も膨らんでいた

翌朝4時37分、真っ暗な中ホテルを出る。

4時53分、北口本宮冨士浅間神社に着く。立派な鳥居をくぐる。

浅間神社の鳥居, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

立派な参道を進み境内へ。ここで登山道に至る道が見つからず、いきなり迷った。
暗い中うろうろする。結局、早朝散歩をしていた男性に教えていただき、小さな鳥居の前に着いたのが5時18分。

吉田口登山道の入口, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

5時25分、神社を抜け「吉田口遊歩道」の入口へ。

吉田口遊歩道, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

この遊歩道は車道とほぼ併走しており、途中切れたりもする(ちょっと気分が削がれる)。

吉田口遊歩道, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

富士山からの豊富な湧き水のためか道は細く洗掘されているところが多く、そこに大きさがまちまちの石が投入されており、ゴツゴツして結構歩きづらい(往路はさほど気にならなかったが、帰りはこれに本当に辟易した)。

6時20分、中の茶屋に到着。

中の茶屋 標高1100米, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

ここで、今回の山行で強く印象に残るできごとと遭遇する。

中の茶屋からほんの少し下った砂利敷きの駐車場に、首輪のない小型犬がいた。傍には壊れかけたキャリー、バケツに水、そしてなぜかキャベツ(少し齧った跡)。
そばに近づくと怖いのか寒いのか、小刻みに震え、うずくまったままぼくを見上げている。少しためらった後でリュックからパン(ヤマザキのランチバック)を一袋分やると、あっという間に食べた。もう一袋やるとそれも食べた。
安心したのか、立ち上がって尻尾を振り、手をベロベロ舐めてくる。

中の茶屋にいた捨て犬, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

ここで引き返してこの犬を届けるべきでは? でもどこに? …などと迷った後、帰りにも会いに来て、食べ物をやり、それから考えようと妥協し、彼(か彼女)を置いていくことにした。

が、尾いてくるのだ。

中の茶屋にいた捨て犬, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

足を速めて最後には振り切ったが、点になるまでこちらを見ていた彼(か彼女)の姿がずっと目の奥に残った。「一合目から富士山に登るなど、お前のエゴであり単なる娯楽だ。あの犬を置いてきてよかったのか?」という声が、頭の中で何度も残響していた。

7時43分、馬返に到着。

馬返, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

富士山禊所跡。鳥居の前にいるのは狛犬でなく猿。

富士山禊所跡, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

広い登山道には、丸太組みの枠に岩などを敷きつめたものが繰り返し出てくる。雨水や雪解け水を流すための「浸透桝」らしい。

一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

8時10分、一合目鈴原天照大神。

一合目 鈴原天照大神, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

8時36分、二合目富士山御室浅間神社。

富士山御室浅間神社, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

9時4分、三合目三軒茶屋。

吉田口登山道三合目 三軒茶屋, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

9時30分、四合目大黒天。ここに大黒天像があったが、すでに里に下ろされたという。

吉田口登山道四合目 大黒天, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

9時50分、井上小屋。
すぐ横の奥まったところに巨岩があり「四合五勺 御座石」とある。

五合目 井上小屋, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

10時9分、五合目富士山雲切不動神社(この辺りから「五合目」が頻出する)。

五合目 富士山雲切不動神社, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

一度富士スバルラインに出る。

吉田口登山道, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

再び山道に入り、富士スバルラインの行き止まりを右手に見る。

富士スバルライン行きどまり, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

再び山道へ。ここも「五合目」。また、この標識の標高(2305m)は、直上の佐藤小屋にある表示(2230m)よりもなぜか高い。

吉田口登山道 五合目 標高2305m. 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

10時29分、佐藤小屋。吉田口登山道を登ってきて初めて営業中の山小屋を見る。

五合目 佐藤小屋, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

佐藤小屋を抜け駐車場の方へ。ここで初めて富士山の山容が見える。
ここまで5時間半、標高差1400mぐらいの行程だ。ここから歩く距離は、ポピュラーな「河口湖口五合目からの富士山」と同じぐらいだろう。

吉田口登山道. 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

経ヶ岳へ。八角堂常唱殿の横に日蓮上人立像。
吉田口登山道ではこういう史跡があるのは五合目までで、六合目以上とははっきり違う。

八角堂横日蓮上人立像, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

10時58分、六合目。
ここに11時前に到達できたことで、今日は大丈夫そうだとホッとする。「山と高原地図」のコースタイムの計算(11時25分)を下回っていた。

六合目, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

八合目までは富士山の“銀座”「吉田ルート」なので、端折ろう。
予約した本八合目の胸突江戸屋に着いたのが、ちょうど15時。

本八合目胸突江戸屋, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

ピークを過ぎた平日だし…と少し期待したけど、寝床はやっぱり枕一つ分の幅にギュウギュウ詰め。夕食はカレーライスにハンバーグ(前はハンバーグは付いてなかった)。これがすごくおいしかった、悔しいことに。

夕食後に雲海に沈む夕陽を眺めて、19時30分消灯。

本八合目からの夕陽, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

2日め、起床は2時15分、出発は2時52分(久須志神社前などでご来光を見るのなら、渋滞を考えても3時半などでよいはずだが、剣ヶ峰まで行くため)。

山頂着は3時44分。まだ真っ暗だ。

山頂前の鳥居, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

少し休んだ後、ご来光スポットとして有名な大日岳を巻いて──夜明け前で暗く、人もわずかで、道も見つけづらく不安を感じながら──進む。風はさほど強くない。

4時16分、富士宮口山頂に着く。
浅間大社奥宮と富士館の間を通り、真っ暗でわかりづらかったがコノシロ池らしき水溜まりを見て、いよいよ剣ヶ峰へ。
名物の急坂「馬の背」は、割と楽に登れた。

剣ヶ峰に着くと、誰もいない。一番乗りだ。
空と地平との境界がもう赤く染まりはじめている。

剣ヶ峰からのご来光, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

燃えるような朝焼け。描写する表現も湧かず、ただ圧倒される。

剣ヶ峰からのご来光, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

ご来光までの間に3人の単独登山者が登ってきた。彼らと少し言葉を交わし、写真を撮り合う。

剣ヶ峰からのご来光, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

ご来光を見終わると、お鉢巡りの残りをゆっくり歩いた。
日本最高峰の頂上の縁(ふち)を歩くお鉢巡りは、本当に特別な体験だ。どの場所に立ちどこを見ても、素晴らしい眺望が目の前いっぱいにある。このお鉢巡りがすばらしいから、ぼくは富士山に何度も登っているようなものだ。

見事な影富士と、深い樹林の中をうねる川。

お鉢巡り, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

遠景に、朝日を浴びた彫刻のような山脈、手前には山に絡みつく濃密な雲海。

お鉢巡り, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

薄い雲の中に、点々と浮かび上がる幻想のような山々。

お鉢巡り, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

6時16分、下山を始める。

8時5分、六合目に無事到着。一気に降りて結構ヘロヘロになったので大休止。
8時50分に出発。

10時48分、馬返。途中登ってくる数組の登山者と行き会ったが、ここでも駐車場に車を停め登りはじめる人が2人。

11時49分、中の茶屋に着く。
あの犬に会うのを楽しみにしていたが──姿が見えない。壊れたキャリーケースとバケツがあるだけだ。
近くをしばらく歩き回った後、イベントの交通整理をしていた男性に尋ねてみたが、朝ここに来たときに犬などいなかったという。
せっかく貴重な行動食であるパンを二つ残してきたのに…。

下山, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

実は下山しながら、壊れたキャリーに彼(or彼女)を入れて麓まで連れて行き、バスで東京に連れ帰ったらすぐ動物病院に連れて行こう、という考えをほぼ固めていた。足を引きずっているように見えたので。その後は、ウチは猫4匹いるんだけど、(…後略…)と。

気落ちと疲れでやや重くなった気分で、吉田口遊歩道を歩く。

12時48分、出発点である北口本宮富士浅間神社に辿り着いた。

富士浅間神社に戻る, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

あとは、帰りのバスが出る富士山駅へ行くだけ。
が、歩きやすいゆるやかな下り坂なのに、情けないほど歩みはスロー。右足の母趾球外側に小さな水ぶくれができ、左足は中指の爪が内出血し、痛いのだ(下山時に靴内で当たったため)。

振り返ると、驚くほど大きな富士山が街を見降ろしていた。

富士山駅へ, 一合目から富士山に登る Climbing Mt.fuji, from the starting point of Yoshidaguchi Climb Trail

登山道の途中馬返の解説板にあったが、江戸時代には富士山は「草山・木山・焼山」の三つに分けて考えられていたという。登山道の起点から馬返までが「草山」、馬返から五合目までが「木山」、その先頂上までが「焼山」だ。
現在ポピュラーな富士山登山は、主にこの焼山部分だけを登っているのだ(経験者なら「焼山」という表現はピンと来るだろう)。

が、たとえば吉田口登山道では、五合目までは1,000mから1,500m級の山と同じく豊かな緑があり、標高と共に植生が移り変わる中を歩くことができる。信仰登山が盛んだった頃の史跡や、一合目からの登山が多かった昭和中盤までを偲ばせる山小屋の廃墟なども点在し、山歩きとしての満足感は高い。

キツいところも何カ所かあったけど、満足だ。
来年は、別の登山道を一合目から登ろうと思っている。

コメント / トラックバック6件 to “吉田口登山道を麓から歩いて富士山に登る”

RSS Feed for du pope : NAKANO Hajime's Blog Comments RSS Feed

ナ力ノ樣お早ようございます.朝の散步へ行く所ですが富士登山にみいられて…あの朝燒け恐い樣で奇麗です始めて見ました.私も二十年前迄一と月に三回登山してました.一番高い新高山3500メ一トルは後ちよっとで大兩になり失敗しましたが.次高山は登頂する事が出來て一生の良い思い出になりました.主人はニ回目も大雪で失敗し.三回目に成功した新高山です..日本も山へ犬を捨てる人が在るのですか..少ないと思います.日本へ行った時野良犬は余り見あたなかったわ…

akitsaiさん、感想ありがとうございます。

玉山や雪山に登られたことがあるんですね。
富士山はなだらかな山容ですが、玉山や雪山はなかなか険しいかたちをしていますね。
きっと登られたときの達成感もすごいでしょうね。

日本では野良犬を見ることはまずありません。平日はほとんど人が来ないような場所だとわかっていて捨てたのかもしれません。
それだけに、とても印象に残ったできごとです。

写真もテキストも、じっくりと拝見させていただきました。

こうやってみると、いわゆるふつの登山と同じなんですね。
もちろん、距離は長いですが。

にしても「お鉢巡り」はぜひとも体験したい。
いわゆるふつうの山では、味わえないんですもんね。

そして中野さんと同じように、一人で同じルートを辿ってみたい、そのように感じました。

てことで、まずは今年登ります♪

おえかきとナカシュンと申します。

とてもとても参考になりました。
今回で8回目!今年こそは成功させたいと考えております。

以前から考えていた吉田参道からの登山、
7月30日早朝から登ります。

また、コメントしに来ますね。
ありがとうございます。

[…] ちなみにその富士山の写真というのはこれ。2011年、ソロで吉田口登山道一合目から登ったときのもの(そのときのブログ記事「吉田口登山道を麓から歩いて富士山に登る」)。 […]


コメントは受け付けていません。

Liked it here?
Why not try sites on the blogroll...

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。