結局は人の声。「うるさい障害者ユーザー」はウェブアクセシビリティ改善に欠かせない(第2回だれコン表彰式などで考えたこと)

Posted on 2011年5月18日. Filed under: 未分類 | タグ: , |

昨日(5月17日)は、第2回だれもが使えるウェブコンクールの受賞サイトの表彰式と、その後、シンポジウム、特別講演、さらに“だれもが使える”というテーマで括った企業出展のライトニングトーク、その後懇親会(ぼくはこのコンクールで実行副委員長という役割を務めてきた)。

第2回だれもが使えるウェブコンクール 受賞サイトとアクセシブルデザイン賞
http://daremoga.jp/ceremony/award.html
第2回だれもが使えるウェブコンクール シンポジウム&アクセシブル製品展示会
http://daremoga.jp/event/symposium20110517.html

Twitterでの実況中継を担当しつつ、登壇者たちの発言内容から考えたことなどいくつかシェアしておきます。

あいさつで話したこと

実行副委員長として、第一部の表彰式の閉会挨拶のときにこんな挨拶をしました。


今回のような非常時に、政府・自治体のサイトや大企業のサイトなど、公共性を期待されるサイトが率先してアクセシブルであるよう努めるのは、当然のことです。

しかし一方で、この東日本大震災が教えてくれたことがあります。
震災時にインターネット上、特にソーシャルメディア界隈では、普通の個人が現場からリアルタイム情報を伝え、自らの知見を元に分析をし、有用なつぶやきをリレーするといった、草の根レベルの情報共有が活発に行われました。
また企業の対応という面でも、規模に関わらず、志を持ち行動力がある企業は被災地・被災者への情報や物資などの支援に強くコミットするというケースが多数ありました(今も続いています)。

このように緊急時・非常時には、自治体でも大企業でもない、一介の個人や小さな企業であっても、意志や機転があれば公的役割をじゅうぶん担いうるということです。

だからこそ、さまざまな人や企業や自治体が発信する情報、ソーシャルメディア上で行き交う情報に障害を持つ人も多く触れることができるよう、上から求められる公共性や企業の大小(=体力)に関わらず、アクセシビリティを普及させていく必要があると思います。

「アクセシブルデザイン賞」での談話が収穫だった


新設の「アクセシブルデザイン賞」は、簡単にいうと「日用品や健常者向けのサービスに潜む“意外に使える可能性”を見つけよう」、そして「ユーザーもメーカー・制作者も、“多くの人が使える”モノやサービスについて洞察を深めよう」というもの。

だれコンは本来「ウェブサイト」が対象だけど、運営やアドバイスには障害者が結構関わっている。
そんな人たちとの交流の中で、「ある弱視の人は、デジカメを拡大鏡代わりに使う」「聴覚障害がある人の筆談には、Boogie Board(e-inkを使った普及品のメモパッド)が便利」といった“普通の道具の意外に使えるところ”に注目が集まった。そこから、高価な福祉用品でないモノやサービスの“使いやすさ”を掘り起こすことは意義があるんじゃないか、と、副実行委員長の森田雄君、委員長の馬塲さんがまとめたのが今回の試みにつながった。

(前説がやや長くなったけど、)今回このアクセシブルデザイン賞を受賞した製品のひとつ、「N便座取っ手」を販売されている企業サンコーさんのお話(営業兼企画担当の方)がとても面白かった。

Rakuten: 『アクセシブルデザイン賞』受賞【送料無料】N便座取っ手
http://ja.item.rakuten.com/attala/ad-16/
(もう早速「『アクセシブルデザイン賞』受賞」と書いてある。さすが商売上手!)


サンコーは、和歌山県の家庭用品の開発メーカーです。

商品の「N便座取っ手」は粘着テープで便座につまみを、という簡単なもので、受賞したことを驚いています。
一般の人のアンケート用紙、日に200~300通を回収し目を通します。困っていること、既存の商品への改善点など。そこから商品を企画するのです。

実はN便座取っ手はほとんど売れていません(笑)。
ヒット商品としては「置くだけ便座シート」があります。
皆さん、トイレで便座カバーを使うが、高齢者の方は一人では難しくて付けられない。そこで「置くだけ」。これは主力商品で、会社の売上40%を占めています。また震災後の計画停電で「便座が寒い」となり、一気に重要が広がりました。前年比500%売れています。

あともう一つは「洗剤の要らない(風呂)クリーナー」。昔は風呂は週末などにちゃんと掃除するものでしたが、ユニットバスに変わって、風呂に入ったついでに掃除するスタイルに変わってきたことがわかっています。そこで10年前に開発したものです。エコブームにも乗って、今も売れています。

このように、私たちの商売は大物(電化製品やサービス)などで生活が変化していく中での「脇役」としてどうやって対応していくか、ニーズを叶える商品を出していくか、ということが大切です。
そこで生活者の声を聞こうと努力を常にしています。
「たかが家庭用品、されど家庭用品」といつも言います。

サンコーさんはユーモラスな話し方で、この日一番会場の笑いを誘っていた。
が、ぼくはこの話を聴いて、「生活者」と「企業(やサービス提供者)」の関係について、シンプルだけど重要なことをしっかり実践しているんだなぁ、と感心した。

  • 生活者の立場であれば、商品に不満があったらそれをストレートに伝えればよい
  • 一方で企業は、求められ愛される商品を世に出したければ、生活者の声をしっかり聴く

ということだ。

不便さを感じる人自身が、もっと声を挙げること

この話は、日本のウェブサイトのアクセシビリティ対応状況を改善するヒントにできないだろうか、と考えた。

たとえば、視覚障害者で、読み上げブラウザーでは意味がわからないウェブサイトの運営者にクレームを言った経験のある人がどれだけいるだろうか。連絡した経験があるとして、その頻度は年間どれぐらいだろう?
上肢障害のある人が、キーボード操作だけでナビゲートできないサイトにいら立ったとき、改善してほしいという連絡を、何割ぐらいの確率でしているだろう。

日本のウェブアクセシビリティのガイドラインであるJIS X 8341-3には、その確保・向上についてフォームなどの連絡手段を用意することが定められている(参考:6章 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件)。

が、ぼく自身が企画・構築に関わったいくつかの企業サイトの例を振り返ってみると、障害者からサイトの使い勝手についてクレームなどが来るケースはほとんど聞いたことがない。巨大企業のサイトや、メディアのサイトであればガンガン届いているんだろうか。

改めて思い至ったんだけど、アクセシブルなウェブサイトをもっと増やすために、

  • あなたが何らかの障害を持つ人なら、使いにくい点についてちゃんと連絡する「うるさいネットユーザー」になること
  • あなたが障害者にとっての使い勝手を分析できるウェブの専門家なら、やはりちゃんと連絡する「うるさい専門家」になること

は、不勉強な、あるいは想像力不足からアクセシビリティ対応を怠る運営者に対して有効な手立てじゃないだろうか?

また、障害を持つ人自身が声を挙げることは、「自分は健常者同様に情報にアクセスする権利があるのだ」とプライドを持つ意味も含め、もっとどんどんやるべきだと思う。権利というのは、獲得したいと思う人自身が勝ち取るべきという側面も指摘しておきたい。

ひとつ補足しておくと、障害者自身が大人しいことが「日本に非アクセシブルなサイトが多いこと」の原因の全てだと言っているわけではない。
行政からも、学術方面からも、またウェブの運営者や制作者からも決定的な打開策がないこの状況に穴を開けられるという点で、障害者自身がもっとが「うるさいユーザー」になり、ついでにウェブの専門家が「うるさい代弁者」になるのは、すぐできることだし、中長期的には意外と効いてくるんじゃないだろうか、と思っている。

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