映画「インビクタス」:王道スポーツドラマであり、ネルソン・マンデラの成功プロジェクトの話

Posted on 2010年1月27日. Filed under: 未分類 | タグ: |



「インビクタス 負けざる者たち」
Originally uploaded by jetalone

アムネスティ・インターナショナル日本のメルマガ経由で応募した映画「インビクタス 負けざる者たち」の試写会&トークショーに行ってきた。

27年間の投獄(マンデラを知っている人ならピンと来るであろう、「ロベン島」という言葉が何度も登場する)から釈放され、南ア初の黒人大統領となったネルソン・マンデラが、95年に自国で行われるラグビーのワールドカップで、代表チーム「スプリングボックス(Springboks)」(ほとんど白人のチームであり、黒人からは嫌われていた)を勝利させるために鼓舞する、という話だ。

冒頭に、池田香代子さん(「世界がもし100人の村だったら」再話者)、竹田圭吾さん(「ニューズウィーク日本版」編集長)、寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル日本 事務局長)のトークがあり、その後に映画という体裁。

この映画にこめたクリント・イーストウッド監督の思いについて、池田さんはご自身のブログにもあるように「国家とは一線を画してきたイーストウッドが、真正面から国家を描き、しかも国家を寿(ことほ)いだのです」と解釈され、竹田さんは「むしろ混迷する今の南アへの皮肉ではないか」と感想を述べられた。一方、寺中事務局長の、

「アムネスティ・インターナショナルはもちろん投獄中のネルソン・マンデラ氏を支援していたが、所属政党のANC(アフリカ民族会議)が「暴力も辞さない」という姿勢を取ったことから、(通常アムネスティが被支援者を呼ぶ)「良心の囚人」としてサポートしてはいなかった(政治犯としてサポートしていた)。このことは、内部でも「形式的だ」という議論があった」

という話も興味深かった。

関係ないが、アムネスティ・インターナショナルという団体の活動の重要さについてちょっとだけ。
長年中国で投獄・虐待され続けたパルテン・ギャツォというチベット僧がいる(彼を描いた映画が「雪の下の炎」)。彼が釈放された理由には、イタリアのアムネスティなどの働きかけがあったのだという。ぼくはこれを知り、政治的な考え、宗教上の信条、国籍、人種などを理由に拘束される人々の人権を守るアムネスティの活動はとても有効なものなんだ、と気づかされた。

映画の話に戻る。

一夜明けてこの映画を思い返してみると、もし最初にトークがなければ「実話に基づくスケールの大きな娯楽作」という印象が強かっただろう、と改めて思った。

前作「グラン・トリノ」もそうだったが、この映画には笑えるシーンが多い(「あはは」ではなく「くすっ」が大半だけど)。モーガン・フリーマン演じるマンデラもすごくチャーミングな人物だ。
また、弱小チームが力を振り絞って勝ち上がっていくというストーリーは、イーストウッド監督好みの抑えた表現ながらも直球のカタルシスを与えてくれる(リドリー・スコットの「エニイ・ギブン・サンデー」みたいな劇画的ド派手さはないけど)。

ぼくが一番グッときたシーンは、オールブラックスとの決勝戦の前、スタジアムの観客たちが新生南アの国歌を歌うところだ。黒人も白人も、皆に戸惑いがあり、周りをちらちらと見る。歌声もばらついている。「融和に至る少し前」が象徴的に現れていると思った。

この映画は、いくつかの見方ができると思う。

  1. 弱かったチームが、自らの使命に目覚め猛然と勝ち進む、王道のスポーツドラマとして
  2. 分断されていた南アフリカの「融和」、新たな「建国」の物語として
  3. 不屈の男ネルソン・マンデラのクレド(信条)の物語として
  4. プラグマティスト(by 竹田さん)であるマンデラの、国家再建のための旗艦プロジェクトの話として

経営者やリーダーは、特に4番めに注目して観てみるといい。劇中マンデラが言う「(白人でも黒人でも)どんなレンガでも使えるものは使え」という台詞の意味は重いと思った。

観る前に、ネルソン・マンデラとはどういう人かを調べてみるべき。

その他、メモ。

  • 寺中事務局長の話。南アでは黒人・白人の融和のため「真実和解委員会」という、対立の解消プロセスの先駆け的な取り組みが行われたという
  • 竹田編集長の話。南アは金など鉱物資源が豊富なため海外からの投資が多いが、人種差別とは関係なく、黒人内も含む所得格差が広がっている。失業率は30%というデータも。隣国から出稼ぎにくる外国人の排斥運動が盛んになっている
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コメント / トラックバック2件 to “映画「インビクタス」:王道スポーツドラマであり、ネルソン・マンデラの成功プロジェクトの話”

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インビクタス 不屈 人間の強さがここまでの人がいる。
敵を許す、キリスト教信者でも数少ない、いやいない。
マンデラはどんな宗教でもいい、ただ神に祈ることは自分の精神の解放になる、とかんじていたのでは?

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