「プロフィット・ピラミッド」メモ(下):シマノ、ヒロセ電機、マブチモーターが高収益である理由

Posted on 2008年10月23日. Filed under: Company, profit | タグ: , , |

書籍「プロフィット・ピラミッド 「超」高収益経営を実現する十四のシンプルな原則」から、メモがてらのシェアの後編です。

この本が取り上げている高収益企業、キーエンス、ローム、ファナック、シマノ、ヒロセ電機、マブチモーターのうち、後半3社分。前編は「「プロフィット・ピラミッド」メモ(上):キーエンス、ローム、ファナックが高収益である理由」をどうぞ。

  • シマノ 広範な現場情報に基づく戦略的判断と大胆な実行による経営
    • 自転車向け部品製造で、1966年(東京オリンピックの翌年)には米国進出。これは国内市場での輸送手段としての自転車が自動車に置き換えられるだろうと予測、自動車先進国である米国の自転車の利用実態が先行指標となるだろうと考えた。その結果「自転車はプレーバリューのある商品として生き残る」という結論だった
    • 70年代後半、カリフォルニアの山中で太いタイヤを履いた自転車で山を降りる遊びが流行っているという情報をキャッチ。ゲーリー・フィッシャーなどMTB創始者たちとの交流を通し、MTB市場への参入を決定
    • 72年には欧州へ。名門メーカーがひしめく欧州市場の参入障壁は格段に高く、本丸である競技用自転車向け部品をまず攻略、そこから一般の自転車部品に攻め下るという戦略を出た
    • 業界の常識を打ち破るシステム・コンポーネント製品を開発し、高いブランド力を構築。ユーザーが自転車を選ぶ際、完成車メーカーのブランドより部品メーカーであるシマノのブランドを選ぶという価値転換を起こした
    • 多くが自転車の熱狂的ファンであるシマノの経営者・社員にとって、憧れのブランドであるカンパニョーロを目標とし追い越すことは、単に競合企業を超えるという以上の大きな意味があった
    • シマノが商品企画で重視するのは、顧客の意見を鵜呑みにせず、参考にしながら「本質的な機能」を見極めること。たとえばSTI(ブレーキと変速レバーの一体化)は、元々子供用自転車に付いていた簡単操作の変速機。プロ選手自身も含め強い反対意見を退け、商品化に踏み切った
    • シマノは「自転車部品業界のインテル」と呼ばれている。シマノの部品が自転車の中に占める付加価値は大きい
    • 自転車の完成品(川下)には進出しない。シマノの部品は、すでに自転車の製造原価の3~4割を占めており、完成車を売らなくても実質的に自転車を売っているようなもの。流通チャネルの末端は膨大な独立ショップであり、そこへの流通コストは必要悪だと考えている
    • 部品メーカーだが、マーケティングの対象は自転車のユーザーと明確に位置づけてきた
  • ヒロセ電機 捨てる経営
    • 日本の電子産業の勃興期、コネクターの開発・生産で成長したヒロセ電機。60年代前半、日本への参入が噂される米国大手コネクターメーカーの工場を見学に。規模は百倍、すべてを自前生産している姿を見て、自社のような体力のない企業は重要な機能にのみ特化し他は外注に出すと決意。ファブレスという言葉が一般化する30年前のこと
    • 1973年、第一次オイルショック。売上が6割ダウンし赤字に。この経験で平時から十分な利益を確保できる戦略と体制の必要性を痛感、目標利益率50%という高利益をめざすきっかけとなった
    • あえて他のコネクターメーカーが敬遠する多品種少量、短納期、需要変動が大きい、新製品向けコネクターを展開。この分野の製品は標準化されたコネクターより数倍高い単価で販売できる事業特性をもつ
    • 必ずヒロセ電機だけに声がかかる仕組みの構築
      • 潜在ニーズを重視した「待ち伏せ」の仕組み。顧客からの引き合いが発生する2~3年前に需要を予測しあらかじめ製品を開発しておく部隊が開発人員の半分
      • 顧客が欲しがる製品は手がけない」「顧客満足(CS)を追求していては、競争力は生まれない
    • 捨てる経営。3割の利益率が確保できない製品は捨てる。めざす利益率を上げない製品をつくることはそれ自体無駄、利益をあげるための経営資源の損失、つまり二倍の損
    • ファブレス体制でも、顧客の特急注文にも対応できる生産体制の構築
      • 外注先に競争原理を徹底適用。納期・品質・コストでランク分け、不況時には高ランクの委託先に注文を集中。委託先はQCDの向上に常に努め、また特急注文にも応じるように
      • 基本はファブレスだが、2割は自社生産(キーエンスと同じ)
    • コネクターは最終製品ではないため地味な製品。「そんなコネクターにも“拍手”の代わりはある。それが高い利益率だ
  • マブチモーター 危機に学ぶ経営
    • 50年代、それまで特注品ばかりだった玩具メーカー向けモーターを標準品に変えることに成功(業界の慣習を変えた)
    • 1957年、日本製玩具の米国向け輸出がストップ(有毒塗料使用の疑い、後に誤りと判明)、玩具業界は大不況に。この経験で、小型モーターの「多用途化」を決意
    • 一貫して小型ブラシ付き直流モーターに集中する「単品経営」を徹底、コストリーダーシップ戦略により高い利益率を確保
    • 「マブチの製品は他社より約二割安く、価格面で圧倒的に強い。普通なら二社に価格競争させるのだが、その必要がない」
    • 売り込み営業はコストがかかり、顧客満足度につながらない。マブチモーターの営業担当は商品企画担当
    • 商品開発へのトップの積極的な関与。企業が成長しても経営陣自らが関与することは高収益実現にとても重要な要素(キーエンスも同様)
    • 絶対、潰れない会社にしよう。そのためには世界中の人々に必要とされる会社にならなくては」。大きな危機から教訓を学び、その解を徹底的に求め続けるなかで事業ビジョンをつくり上げた

以下、五月雨に感想。

捨てる経営」「ファブレス経営」は、中小ウェブ制作会社に役立つ視点。では、何を外に出し何をコア価値として保持するか。顧客に「やりませんか」と言える力「できますよ」と言える根拠だけを残せばいい。
その文脈でも、キーエンスやファナックの「一部の生産機能は残す」プラクティスにはとても共感できる。

川上、川下といったフレームワークでは単純過ぎるかもしれないが、企業のウェブ活用のライフサイクル、それに呼応するウェブ屋側の提供価値の連鎖をリニアに考えてみようとするとき、ロームの話に出てくる「利益率は(川上から川下まで)スマイルカーブを描く」は示唆的かもしれない。ちょっとちゃんと考えてみよう。

そういえば、今年の初めに「ザ・プロフィット」を読み返し、自社(アークウェブ)が取るべき利益モデルを考えた。
そのとき、上述の「価値連鎖(バリューチェーン)」という考え方の有効性に気づいた。そこで特に重要なのは、連続すべきバリューをちゃんと繋げておくこと(そのように見えること、実際にできること)、また決め手となる価値を見極め、それが動くときに会社もそれに沿って変化していけることの2つではないか、と思った。
つまり「ザ・プロフィット」でいえば、「価値連鎖ポジション利益モデル」と「相対的市場シェア利益モデル」の融合版ということか。いや実際に本の中でも「(リーダー企業は)いくつかの業界では、従来の市場シェア・リーダーではなく価値連鎖(バリューチェーン)リーダーが強いようです。バリュー・チェーンの最も重要な部分で最強のポジションを確保している企業です」(244ページ)と看破しているんだけど。

シマノが、自らの市場、商品、サービスに対して仕事以上にシリアスになれる社員を擁しているアドバンテージ(「社員をサーフィンに行かせよう」でシュイナードが言っていることと同じ)。そしてそのチームで、憧れのブランドを打ち破ろうというときに湧いてくる力は、狭い意味での「仕事」を大きく超える偉業だろう。すばらしい。そんな仕事がしたい。

利益を上げることは、ビジネスパーソンが誇るべき芸(アート)だ、と改めて感じた。全力で臨もう。

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