[本] 生きていた!生きている? 境界線上の動物たち

Posted on 2008年9月9日. Filed under: book | タグ: , , |

を読んだ。

絶滅の危機にある、またはすでに絶滅したとされる動物たちのことを、現地取材などを活かしながら綴った本。出版は98年なのでやや古い。シマフクロウ、ニホンカワウソ、ツキノワグマ、イヌワシなど有名な動物ばかりでなく、名前も知らなかったクニマス、ウケクチウグイのようなものも登場する。
明治の中ごろまでニホンアシカは東京湾を訪れていた、なんて史実も紹介される。

以下、強く印象に残ったところ。強調はすべてぼくによるもの。

「天狗たちの黄昏 イヌワシ」の章。

「これらの開発計画の最大の欠陥は、事前の環境調査(アセスメント)がまったく行われていない点だ、と菅家さんは語る。ダム計画ではまったくゼロ、大規模林道における調査はイヌワシが博士山を去ってから始められた。そして菅家さんが「A級戦犯」と語る広域基幹林道では、イヌワシの巣に最も近い心臓部の森を切り開くのにもかかわらず、植生の調査しか行わない。そして肝心のイヌワシの生息調査は「工事しながら調査する」という。これは建設省と水資源開発公団が長良川河口堰で行ったのと同じ手口のごまかしだ。」(43ページ)

アセスメントと聞いて、植物だけでも1300種を超える多様性を誇る(これは日本でトップレベルだとか)高尾山のどてっ腹にトンネルを掘るという「高尾山トンネル」問題を思い出した。

高尾山トンネル崩落、続報(動画つき):詩人53の【コノコトコトコトモノコトコラム】
http://53.ram.boo.jp/?eid=798796

1. 環境省による環境アセスメントはないの?
高尾山トンネル工事が話に持ち上がった当初から、アセスメントはある。が、環境省によるアセスメントはなく、都が行なっている。都の出してくる調査報告はあまりにもいい加減。高尾山にはない植物の名前が載っていたり、あるいはあるはずの植物が載っていなかったり。堪り兼ねた住民が、住民によるアセスメントを行ない、毎回提出しているが、返事は「問題ない」の一点張り。八王子城趾のトンネル工事の際には、「オオタカの産卵・巣立がゼロになった」という報告にすら、同様の回答だった。

「ウドの大魚 ウケクチウグイ」の章。

「農工業用水や発電などの水利用は、すべて効率性や利便性を追求するだけでは「次の変化」に対応できないことを人間が知るべきです。ひとつの目的のためだけに高効率を求めると、他の面ではまったくだめになってしまいます。コンクリートの三面張りもそうですが、治水効率は良くても、生物の多様性にはまるでだめです。(略)
ウケクチウグイは図体が大きいだけで、食用にも遊魚にも鑑賞にも適しません。人間には何の利用価値もない魚です。しかし、そういう魚が生きていて、その魚が生態系の中で、どういう役目を果たしているのか。それが忘れられ、軽視されています。そうした世の中では、全体が健全になることができないと思います。」(79ページ)

この取材は97年~98年のものだけど、この頃からこんなことが言われていたのか、という感じ。

「古代島の妖精 アマミノクロウサギ」の章。

「今から100万年ほど前に、九州と琉球列島の間にトカラ海峡が生まれた。この時点で大陸につながる細長い半島状になった琉球列島は、北から順に島として独立していった。そうか!本州から見れば中途半端に感じる位置の奄美大島だが、大陸から見れば奄美こそが“大陸の果て”に位置する島であったのだ。そして古代の動物たちが、新世代の動物たちとの生存競争を免れて生き残るタイムカプセルとなった。」(225ページ)

なんで琉球列島でも特に奄美大島に固有種が多いのかという話、納得した。

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