「マイクロソフトでは出会えなかった天職」感想「情」編:もしあなたが、子供のころ本さえ自由に読めない環境だったとしたら?

Posted on 2007年10月20日. Filed under: 未分類 | タグ: , , , , , , |

「マイクロソフトでは出会えなかった天職」の感想を書く。

この本はいいよ。
今年は、WebSigエコ&ピースの勉強会をスタートしたなどのきっかけもあって、いわゆる社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)に関する本を何冊か読んだ。なかでも、今のところ一番印象に残ったのがこの「マイクロソフトでは出会えなかった天職」だ。

休暇でネパールの村を訪れたことをきっかけに、マイクロソフトの要職を辞して、途上国の子供に「教育」の機会を与えるNPO「ルーム・トゥ・リード(Room to Read)」を立ち上げたジョン・ウッド氏の著書。

なにがいいかというと、彼がどうして動いたのか、人や国全体が向上するために「本」や「教育の場」がいかに重要かという主張を「感情」に訴える内容が充実している一方で、変革を大きく実現するために組織をいかに運営するかといった「理屈」≒戦略・戦術面での示唆にも富んだ、欲張りな本なのだ。

この記事ではまず、この本が持つ感情に訴える側面について書こう。

マイクロソフト在職中に、久々の休暇でネパールのバフンダンダという貧しい村と、その学校と図書館を訪れたウッドは、校長に「あなたはきっと、本を持って帰ってきてくださると信じています」と言われる。カトマンズに戻った彼は、熱に浮かされたように、ネットカフェで100人以上の知り合いにこんなメールを出す。


件名:ネパールに本を──協力してください

みなさんへ

おめでとう。あなたはジョン・ウッドの思いつきに参加する権利を得ました。
(…)
ネパールに来てヒマラヤをトレッキングしていた僕は、地元の学校に案内されました。
(…)
ネパールは世界でもとりわけ美しい国です。そして、とりわけ貧しい国でもある。
(…)
学校の物資が足りないことは、悲しいことです。(…)その学校は地元でいちばん大きいのですが、「図書館」には本が20冊足らずしかなく、それもバックパッカーが置いていた本ばかり。1~8年生の450人が読めるような代物ではありません。みなさんが子供のころや、みなさんの子供に、もし本がなかったとしたら? 人生にとてつもない影響を及ぼすことでしょう。
そうなんです。だから協力してください!
(…)
ネパールに送る送料や手数料は、すべて僕が負担します。子供のころのエネルギーと想像力と、知識への渇望を思い出してください。ネパールの子供たちを助けるために、ささやかなことをしましょう。友だちにも声をかけて! だれだって人生で何かを変えたいと思っている。そのチャンスです。
(…)
最悪の選択肢は、何もしないこと。
あらかじめお礼を言っておきます。

カトマンズから感謝をこめて
ジョン

人生で最高のセールストーク」は大成功し、コロラドの実家に届き続ける膨大な量の本の整理を彼の父親が手伝ってくれ、439kgの本をネパールに送り出す。会話の少なかった父と息子は、本を村まで届けるためにネパールの山奥を訪ねる忘れがたい旅をする。このへん、泣きどころ。

この本にはまた、「教育のチャンスが与えられることの重要さ」を考えさせられる、途上国の子供が2人登場する。

一人めは、ベトナム人青年のグエン・タイ・ブー。97年、ウッドがルーム・トゥ・リードをはじめる前の話だ。安ホテルに住みこみで働きながら英語を学び、コンピューター学校ではウッドの前でExcelのショートカットを披露してみせたブーに、ウッドは勝手にビル・ゲイツの名前を使って20ドルの“奨学金”を出す。

もう一人はインド、ニューデリーの貧困家庭の少女アニタ。15歳になった彼女は、両親から教育の打ち切りを告げられ、結婚を勧められる。
ルーム・トゥ・リードの「ルーム・トゥ・グロー奨学金プログラム」のその年の選考はすでに終わっていたが、彼女は「学校に通うことを支援してもらえなければ、私は1年以内に結婚させられて、8年生のレベルで一生終わってしまいます。夫は私より教育を受けていて、それをかさに私を支配するでしょう。私をそこから助けてもらえない理由を教えてください」と訴えて感銘を与え、追加の申請が認められるんだ。

女性に教育の機会が与えられると、母親の健康が増進する、幼児の死亡率が低下する、エイズなど感染症が抑制される、飢餓と貧困が減る、といった社会全体へのメリットがあるという。

「マイクロソフトでは出会えなかった天職」は「情」と「理」の両面にしっかり訴えてくるので、ルーム・トゥ・リードの活動の強烈なプレゼンテーションアイテム、さらにいえば集金装置になっていると思う。

巻末には「ルーム・トゥ・リードの活動について」というページがあり、「あなたにできること」「あなたの寄付でできること」が記されている。それらはちゃんと日本向けの内容になっていて(どうせなら寄付額もドルでなく円にすればよかったのに!)、公式サイトへ誘導している。

ぼくもさっき、この記事を書く前に、”Make a Donation – Get Involved – Room to Read“というページから寄付をしてきたところ。寄付の使途(“Restrictions)のところは”Girl’s Scholarships“を指定して。
本当は、日本人の貢献を示す意味では東京チャプターを通じて寄付したかったけど、準備中とのことで残念( Room to Read東京の説明資料 *PDF* )。

「理」の部分についての感想は、次回に続く。

「マイクロソフトでは出会えなかった天職」感想「理」編:優れた社会起業家としてのジョン・ウッド
https://nakanohajime.wordpress.com/2007/10/25/leaving-microsoft-to-change-the-world2/

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[…] Posted on 10月 25th, 2007. さて、「「マイクロソフトでは出会えなかった天職」感想「情」編:もしあなたが㮮.」に続き、今度は「理」編を書く。 […]

はじめまして!私にとって寄付はあまり意味を持ちません。なぜなら、寄付をしたい人々は他にもかぎりなくいて、きりがないからです。
自己満足をもう一歩踏み出しての意義を考え中です。

コメントありがとうございます。

確かに寄付したい団体を考えたら、沢山の団体が思い浮かびますね。
きっとますみさんは、ぼくより色々な問題に敏感な視点をお持ちなのだと思います。
ぼくもできる範囲で世の中をよくしていきたいので、寄付はその手段のひとつなのだと思います。


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