[management]「社員をサーフィンに行かせよう」から(その2)

Posted on 2007年7月12日. Filed under: CSR | タグ: , , |

準備稿その2。

私はそれまでずっと、企業家を自任するのをあえて避けてきた。私はクライマーであり、サーファー、カヤッカー、スキーヤーであり、そして鍛冶職人だ。ただ単に、私や仲間がほしいと思う性能のいい道具や機能的なウェアの製作を楽しんでいるだけ。(…)ところがいまや、所有する企業は多額の個人資産を受け入れ、従業員とその家族みんなの生活が、自分たちの成功にかかっていた。
自らの責任と金融債務についてじっくり考えた結果、ふいに、自分が企業家であり、おそらくこれから長い間、企業家であり続けなくてはならないことを悟った。また、このゲームに勝つには、真摯な姿勢で取り組む必要があることも。
しかし、と同時に、一般的なビジネス慣習に従っていては、決して自分は幸せになれないこともわかっていた。機内誌の広告に登場する青白い顔をしたスーツ姿の屍から、できるだけ遠くに身を置きたいと思った。企業家にならざるをえないなら、自分なりの方法でなろう、と。

経営書の多くは、当たり前のことだが、成功した経営者によって書かれていて、しかも彼らはスタート時点から頂点をめざすことに疑いを持っていない。
ぼくは逆に、シュイナードのようなreluctantなスタートのしかたにとても魅かれる。それは20代の頃、およそ自分は私企業への就職には向かない、と悶々としていた時期があったからだろうな。

一般的な慣習を破って自分なりの制度を打ち立てることは、経営の創造的な側面であり、ひときわ充足感の得られる仕事だ。とはいえ、私はなんの下調べもせずやみくもに飛びつくような人間ではない。
一例を挙げれば、1978年に出版したアイスクライミング技術に関する本は、完成までに12年かかった。(…)
ビジネス知識の探求においても、私は同様の姿勢で取り組んだ。数年かけてビジネスに関する本を読みあさり、私たちに適切な理念(フィロソフィー)を探した。とりわけ、日本やスカンジナビア諸国の経営スタイルを説いた本に関心を向けた。アメリカのビジネス手法は、数多くある道の一つにすぎないことを知っていたからだ。

経営は「創造的行為」だ、と看破している。
後段の「パタゴニアの理念 – 製品デザインの理念」内の「革新的であるか、発明であるか」も併せて読めば、シュイナードがいう「創造」が「すでにあるアイデアをもとに生む革新」であり「フュージョン(融合)料理」を意味していることがわかる。

4件のフィードバック to “[management]「社員をサーフィンに行かせよう」から(その2)”

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ちょっと前に新聞でパタゴニアの社長のインタビューが載っていて、いい社長そしていい会社だなーと思いました。「環境保護のために会社を利用する」みたいなことも書いてあって、こういう考えで起業する人ってあんまりいないんじゃないかと思い目からウロコな感じでした。

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おぉそうなんだ。そのインタビューはシュイナード氏だと思うけど、ちなみに彼はパタゴニアの「オーナー」で、CEOは別にいます。B'>彼は「意思決定はすべて、環境危機にかんがみてする」と言い切ってます。カッコいいよね。

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パタゴニアとであったのは、アメリカで大学に通っているころでした。極寒の地に住んでいたのでパタゴニアレイヤーシステムはカッキテキでした。それまで愛用していた革ジャンとかぜ~んぶ捨ててしまいました。今でこそフリースなんて言われ誰でも愛用してますが、チンチラ(シンチラ)という名で世に出して、今から10何年も前にはすでにペットボトルのリサイクルで作られるようなりました。すごい会社だなぁ~って思いました。何年か着ていたシャツのボタンが割れたので、電話で問い合わせたら、ボタン送ってくれたり、チャックが壊れたら、それを修理してくれる。日本人に染み付いている「モッタイナイ」心をくすぐる会社ですね。残念なことに、日本のパタゴニアはいまいち対応が悪いです…というか電話対応の感じが悪かったです。

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おぉ、貴重な体験談ありがとうございます。おっしゃる通り、「レイヤリング」という考え方はPatagoniaが広めたものらしいですね。ペットボトルからフリースにしろ、オーガニックコットンへのこだわりにしろ、ともかく理念と実践がすごいと感じます。

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