CSRの裏づけとしての「ブランド知識構造化」と「ソサイアタル(Sociatal)性」という話(オルタナのシンポジウム感想 前編)
環境問題やCSRに興味がある人なら読んでいるかもしれない雑誌「オルタナ」。ぼくも定期購読しているけど、2008年11月19日、そのオルタナ主催の「ソサイアタル・コミュニケーションとCSRの新しいパラダイム」 というイベントに行ってきました。
環境と社会貢献と「志」のビジネス情報誌「オルタナ」|シンポジウムのお知らせ
http://www.alterna.co.jp/sympo_200811.html
「ソサイアタル・コミュニケーションとCSRの新しいパラダイム」
メインスピーカー:慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授 井上 哲浩
ゲストパネリスト:
日本ユニセフ協会 林田 佳子
王子ネピア株式会社「nepia 千のトイレプロジェクト」リーダー 今 敏之
日本フィランソロピー協会 理事長 高橋 陽子
オルタナ 編集長 森 摂
会場に入ってまず意外だったのは、ほぼ9割の人がスーツだったこと。場所は丸の内のど真ん中の三菱ビルだし、聴衆でノートPCを持っている人がほとんどいない(コンプライアンス絡み?)など、IT系のフラットな、あるいは環境系でもゆるいイベントに慣れているぼくには新鮮な体験だった。
それと共に、「オルタナ」ってそういう人向けの雑誌だったの? という思いも。が、CSRってもっぱら大手企業・上場企業だけの話なんだ…と思ったとたん「だからこそ!」とやる気が出てきたり。
まず基調講演は慶應義塾大学大学院経営管理研究科(いわゆる慶応ビジネススクール)の井上哲治さん。
ウェブ関連でもよく語られるマーケティングやメディア戦略の話が主体でちょっと驚いたけど、以下気になった点をメモ。
基調講演「オーガニック・コミュニケーションよる深いソサイアタルな絆の育成と知識構造化」
- 企業戦略のスタンスは差別化、フォーカス、コストリーダーシップ。日本企業は特にコスト最小化で戦い、それが競争優位の源泉だった
- 企業のマーケティングにおいてコミュニケーション戦略は投下予算が一番多いが、その意思決定は大雑把だ(生産現場は一円単位でやっている、などに比べて)
- そこで、マーケティングの現課題は「マーケティングROI(費用対効果)」
- 一方、情報の受け手である一般の人は、情報が増えすぎて過負荷に。皆さん、昔はもう少しテレビCMをちゃんと観ていたのでは?
- コミュニケーションのあり方を考える必要性。コミュニケーション目標を決め、効果測定・効率管理をするなど
- 商品の同質化、市場の成熟などで売るのも難しくなっている
- 同質化の中で差別化をしようとすると「エッジの効いた表現による差別化」になる。が、それはわかりづらさにつながる
- 消費者の頭の中に「知識のしきり(知識構造)」を創造する必要がある
- 日産自動車では、プロダクトバリューの「フィーチャーバリュー」(例:175馬力)でなく「ノンフィーチャーバリュー」(例:上質感、落ち着き、おもてなし…)を重視している
- 日産の新しいIMC(統合マーケティングコミュニケーション)の例として、TIIDAの販促
- 新聞による誘導とブログによる理解助成を行った //ふーん、という感じ
- TIIDAは1.5リッタークラスの車だが、一クラス上のような魅力を訴求することに成功した
- ブランド・マネジメントでは、かつてブランド・エクイティ(ブランド資産)の話が多かったが、昨今(ケビン・ レーン・ケラーの登場以降)は「ブランド知識形成」がマネジメント対象になってきた
- ユーザーが「宣言型知識」は持たなくても「手続き型知識」が活性化されるようマーケティングを行っていき、知識構造化を図るべき
- ある会社の「株価」は宣言型知識(事実知識)、「株価を調べる方法」は手続き知識
- 「タウリン1000mg配合」のような宣言型知識を伝えようとしても消費者はもう頭がいっぱいなので、推論できるような知識を植えつけよう //…という話?
- 効果指標としても「知識構造化がうまくいっているかどうか」を見る
- また、知識構造化を促す「オーガニック・コミュニケーション・ミックス」が必要
- リーチマックス(ばら撒き)的なことをやっても顧客は掴めない。もっとメディアを有機的に捉えよう
- 水をやるメディア(新聞)
- 種をまくメディア(テレビ)
- 土を耕すメディア(インターネット)
- 収穫・確認のメディア(店頭)
- 知識構造化の促進要因:その1 ソサイアタル(Sociatal)性
- Sciatalとは、Social(ソーシャル)に「環境、システム、メンバー、メンバーのつながり、長期的な関係」などを加えたもの
- 知識構造化には「経験・体験」が鍵!
- 自分自身とブランドを関連させること
- ソーシャル・エゴ(エゴとソーシャル性の合致点?)
- 絆、ブランド・アタッチメントの創造
- すべてのメディアにおいて、ソサイアタル(Sociatal)性を加えると知識が構造化されやすい
- たとえば下の方の施策ほど知識の構造化が進む
- 自分にとっての虫歯予防
- 家族にとっての虫歯予防
- 地域にとっての虫歯予防
- 地球の人にとっての虫歯予防
- 知識構造化の促進要因:その2 共感
- ブログでやると共感が生まれる //あまり新しいことはないかなー
- ソサイアタルにやると広告っぽくなくなる、「ブランド広報」的になる
- nepia「千のトイレプロジェクト」について
nepia 千のトイレプロジェクト
http://1000toilets.com/
nepia 千のトイレプロジェクトチームブログ
http://blog.1000toilets.com/
日本ユニセフ協会・ネピアタイアップキャンペーン トイレが子どもたちの命と健康を守る!
http://www.unicef.or.jp/partner/event/nepia/- キャンペーン期間:2008年7月~
- nepiaは以前から「うんち教室」をやっていたが、これから広がった
- nepiaの商品を買うとプロジェクトに活かされる
- 東ティモールでユニセフの「水と衛生に関する支援活動」をサポート
- 1000の家庭トイレの建設
- 15の学校のトイレの建設または修復
- 衛生習慣の普及と定着
- 小林紀晴氏、東急Bunkamuraで写真展、など
- 「千のトイレプロジェクト」の効果
- オーガニック・コミュニケーションによる深いソサイアタルな絆の育成と知識構造化 //はぁ…。
- 態度変容:大衆(現地、日本の消費者)、ステークホルダー(流通・メディア)、社内の知識構造化
- 王子ネピアは王子製紙グループ。グループ内の志気を高める効果があった
- 売上への効果:前年同月比シェア向上。売上数字は減少しているが、大手3社でのシェアは123%。他社は99%、89%と減らしている
- 価格弾力性:非弾力的になった
- 他の企業のCSR事例
- Volvic:1L for 10Lプロジェクト
- 世銀:FirstBlue project //知らなかった。後で調べる
- GE:エコマジネーション
- シェル:Energy Challenge
- 積水化学:志塾 //知らなかった。後で調べる
- 住友化学:オリセットネット
追加情報と感想など
「ソサイアタル(Sociatal)」については、ウェブ上にこんな情報も。
CSRとソサイアタル・マーケティングの考え方|Column|バリューマーケティング研究所
http://www.vmlab.jp/column/societal.html
今僕らが挑んでいる新しいテーマが「ソサイアタル(Societal)」=“社会関係性”です。ソーシャル(Social)=社会的・社交的などとはちょっと違って、より人間と社会・自分と周辺の“関係”に寄った言葉です。少し難しいかもしれませんが、例えば、ある奥さんが素敵になりたいと考えて、化粧品や洋服を選ぶとします。その時に、ママが素敵で喜んでくれるお子さんやご主人のことを思うとすると、それはもうソサイアタルな一面を持っているんですね。もちろん、エコバッグでCO2を削減するのは、“自分の住む社会”を守るためですから、完全にソサイアタルです。
企業やブランドから提供される価値や、マーケティング・メッセージは、それがソサイアタル性を帯びている時に、極めて自然に(オーガニックに)浸透する、と。さらに言えば、企業やブランドは、ソサイアタルな認識に基づいて、商品やサービスの価値を考え、それを伝えれば、CRCとCSRが両輪で機能し、社会にとっての“善”の活動として受け入れられる、と。
ビール1パイ200円【千のトイレ 今 敏之】?|?nepia 千のトイレプロジェクトチームブログ
http://blog.1000toilets.com/2008/10/biru.html
ソサイアタル性とは、社会関係性だ。ソシアル性との違いは、社会性、社交性という単体的レベルではなく、組織・団体・コミュニティなどの複数のノード(点)が、リンクされたネットワーク的な集合関係を表している。企業は強いソサイアタル性を持って、その社会的存在価値、すなわちその企業が存在することによって、社会的な利益をもたらしている組織体であるべき。
感想です。
コーズ・(リレーテット・)マーケティングの理論的な裏づけとしての「知識構造(化)」と「ソサイアタル(性)」という説明は難しいけれど、興味深い。が、たとえばチャネルとしてのネット活用への踏み込みはあんまり深くなくて参考にならなかった。全体に、もっと定量的な分析(あるならば)をバンバン駆使して説明してくれた方がよかったのでは? とか。
長くなってしまったので、続きは後編へ。





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11月 22, 2008